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2018年2月
バッテリーあがりの真相は…

走行中に片方のヘッドライトが点滅したり、メーター内の表示が全て消えてしまう事があるという、平成18年式のホンダ・ゼスト(車輌型式DBA-JE1、エンジン型式P07A、走行距離7万km)のトラブル事例を紹介する。

片方のヘッドライト(ディスチャージ式)は新品に交換されており、その後も前述の不具合現象は発生している事から、それが原因でなかった事実が裏付けされる。

これまでの経緯を詳しく聞いてみると、不具合現象が発生した後は、クランキングができない状態までバッテリーが弱っていたので、新品のバッテリーとリビルト品のオルタネーターに交換して2週間くらい試運転して、問題が無い事を確認してユーザーに納めたが、再発したらしい。

年をまたぐ10日の間に不具合が発生して、それは夜間の渋滞走行時に起きたとの事。

この時期にユーザーが使用するであろう電気負荷を作動させ、放電量と充電量とのバランスを計測してみると、アイドリグ状態では20アンペア放電していた。

5時間率容量が28AHのバッテリーなので、たちまち過放電状態になることは明白である。

どれくらいでダウンするか実験してみると、30分経過したときにヘッドライトが点滅するようになり、メーター内の表示とオーディオが消えてしまった。

この時点での電圧は、8ボルトまで低下していた。

容量の大きなバッテリーに交換して同じテストをしてみると、ダウンするまでの時間は伸びたので、ほとんどバッテリーに依存した状態で使用されていた事になる。

ちなみに、オルタネーターは定格値どおりに電流を出力していた。

この間に気になったのは、エアコンのコンプレッサーとコンデンサー冷却ファンがずっと回りっぱなしになっていた事で、気温6℃の条件下ではありえない事である。

エバポレータの温度センサのコネクタを外すとそれらが停止する事から、温度センサの不良は明らかである。

コンプレッサーとコンデンサー冷却ファンで10アンペア以上の電流を消費するので、相当の過負荷状態である。

冬場にコンプレッサーを作動させる必要性は低いのであるが、一年中ONしている人は少なくない。

室内の温度と併せて、湿度を検出してコンプレッサーの作動を制限しているメーカーもある。

また、ランプの無駄な電力消費も大きく影響し、ハロゲン球のフォグランプは、ディスチャージ式のヘッドライトよりもその値が大きい。

ある軽自動車メーカーの場合は、ヘッドライトをハイビームにした時には、フォグランプが消灯するようにしたものがある。

ゼストの場合、フォグランプ装着の有無によってバッテリー容量が異なっていた。

肝心なのは、図で示すように電気を使う量と補える量のバランスが重要な訳である。

取扱説明書を見ると、「1日10km以下の走行の繰り返しや、ヘッドライトを灯けたまま停車を続けると、バッテリーあがりになる可能性が高まる…」との記述があった。

エバポレータの温度センサを交換する事と、アイドル状態でもバッテリーからの持ち出しが無くなる程度の電気負荷に絞る使い方をするようにアドバイスして、車を引き渡した。

不具合の直接原因が車にない場合でも、バッテリーがあがってしまうとユーザーは車が悪いとしか思わないので、その対応は慎重に行う必要がある。

懐古的な考えで申し訳ないが、1980年代の車のようにアンメーター(電流計)があったら、ユーザーに理解してもらいやすいと思う次第。

《技術相談窓口》


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