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2018年3月
バッテリーあがりの真相は…

エアコンコンプレッサがONしないという、年式不明(構内使用車)のアルト(車両型式ABA-HA23S、エンジン型式K6A)のトラブル事例を紹介する。

話を聞いたところ、エアコンコンプレッサが焼きついたため、コンプレッサ及び配管類を交換し冷媒ガスを充てんしたが、エアコンコンプレッサのマグネットクラッチがONしないという相談であった。

なお、エアコンはマニュアルエアコンで、エアコンコンプレッサが焼きついた原因は不明。

回路図は図のようになっており、エアコンコンプレッサをON/OFFするための条件は、回路図を見る限り、

@ブロアファンSW

AA/C SW

BデュアルカットSW(冷媒圧力SW)

Cエバポレータサーミスタ(IN)

Dエバポレータサーミスタ(OUT)

の5つと考えられた。

相談のあった工場もそのあたりは熟知しており、A/C SW信号とブロアファンSW信号及び、デュアルカットSW信号を点検し、全て問題ないとのことであった。

このため、エバポレータサーミスタの特性ズレを疑い、IN側とOUT側のサーミスタを2つとも新品に交換したが改善されないというのが事の次第。

実は数か月前に、同じスズキ車のマニュアルエアコンでエアコンコンプレッサがONしないという問い合わせを受けていた。

その時の原因はサーミスタの特性ズレであったのだが、原因を究明するために整備書を調べたときに、珍しい制御が入っているなと感じたという記憶が残っていた。

記憶を頼りに整備書を再確認したところ、やはり同じ制御が入っていた。

この車のマニュアルエアコンには、エバポレータサーミスタがIN側とOUT側に計2つある。

そもそも何故2つ必要かというと、どうもエアコンコンプレッサのON時間を必要最小限に留め、エンジン負荷を抑えることにより燃費をよくすることが狙いと思われる。

仕組みはこうだ。

そもそもユーザーがエアコンを使用するのは、室内の温度が高いために温度を下げたいと思うからである。

一般的に室内温度が高い時には外気温も高いため、冷房を効かせるには空気を冷やして室内に送り込む必要がある。

そこでエアコンをONし、温度の高い外気ないしは内気をエバポレータで冷却し、ユーザーに冷たい風を送るわけである。

しかし、エバポレータを通過する前の空気の温度が十分低ければ、必要以上に冷やす必要はない。

そこで、エバポレータ入口側の温度をモニターし、その温度により必要な時のみエアコンコンプレッサを作動させるというシステム。

エバポレータ入り口温度とエアコンコンプレッサの作動の関係はグラフの通りとなっている。

では、本題に戻ろう。

相談があった日は2月の寒い日で、外気は7℃前後。

先ほどのグラフの通りにエアコンシステムが制御されているならば、コンプレッサは絶対にONしないということになる。

そこで、相談者に「一度暖房を最強にし、室内温度を十分に温めてからエアコンをONしてみてください」と伝えたところ、コンプレッサが作動したとの連絡があった。

冬場にエアコンの修理をする機会はあまり少ないとは思うが、このようなシステムであれば同じ経験をしたメカニックも多いのではないかと思われる。

同メーカーのマニュアルエアコンを冬場に修理する際には是非ご注意願いたい。

最後に、ガラスが曇った際に作動させるデフロスタは、そのSW信号がEPI&A/Cコントローラに入力されると、エバポレータサーミスタの信号を無視ししてエアコンコンプレッサが作動することを付け加えておく。

《技術相談窓口》


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