中古車を買ったばかりのユーザーから、走行中にエンジン警告灯(MIL)が点灯することがあるという訴えの、平成15年式のアルファード(車輌型式UAANH10W、エンジン型式2AZ、走行距離17万km)のトラブル事例を紹介する。
エンストしたりすることはないらしく、ユーザーがそのまま工場まで乗り付けて調べた結果、DTC「P1349」を検出していたとのこと。
その工場のスキャンツールではデータモニターができず、それ以降の診断を依頼されたので、その結果について説明する。
「P1349」のダイアグノーシス・トラブル・コードは、可変バルブ・タイミング機構(VVT)が、エンジン・コントロール・ユニット(ECU)の指示通りに作用していない状態が続いた場合に検出されるものである。(図1参照)
スキャンツールを接続して、制御の様子を調べてみると、ECUの目標進角度と実際の進角度に10度位の差が見受けられた。
アクティブ・テストでVVTを強制駆動してみると、通常であればすぐにエンストするのに対して、ややタイムラグを伴ってエンストすることからも、正常な動きではないと思われる。
VVTはエンジン・オイルの圧力を制御することで、吸気側のカムシャフト前端に設けられたアクチェータを動かす仕組みであることは、周知のとおりである。
アクチェータに掛る油圧は、オイル・コントロール・バルブ(OCV)への通電割合を変えることによって制御され、その動きはスキャンツールによって正常であることか確認できた。
そうなると、油圧が正しく制御されていないことが予想される。これから先の点検は、目で見てわかる機械的な作業になる。
まずはエンジン・オイルの量と汚れ具合をレベルゲージで調べてみると、オイルそのものは汚れや量には問題はないものの、ゲージの変色が気になった。
オイル・フィラー・キャップを外して内部を点検してみると、かなりの量のスラッジが見受けられた。シリンダ・ヘッド部分に設けられたOCVを取り外してみると、予想通りの汚れがあるものの、ブランジャの動きには問題なかった。
次に点検したのは、このOCVにオイルが圧送される途中にある、オイル・フィルターである。
このフィルターはシリンダー・ブロックに取り付けられており、パワーステアリングのオイル・ポンプを外してからでないと、取り外すことが出来ない。取り外した物を図2に示すが、フィルターと一緒に大量のスラッジが出てきた。
フィルターも完全に目詰まりしており、これではまともに作動するはずもない。
とりあえず、フィルターを洗浄して組み付けて作動を確認してみると、以前よりは進角するようになったが、まだ目標に対して遅れが生じている。
完全に良くするには、エンジンの分解・洗浄またはリビルト・エンジンとの交換が必要である。
このまま乗り続けると、エンジンが焼き付いてしまう可能性が高いことを含めて、ユーザーに説明するようお願いして、車を引き渡した。
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