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2018年7月
高圧ポンプからの漏れ点検

チェックエンジンランプが点灯するという平成12年式クラウン(車両型式JZS175、エンジン型式2JZ-FSE)の整備事例を紹介する。

ダイアグノーシスを点検すると、コードP0172(B1リッチ異常)、コードP0175(B2リッチ異常)を表示。B1とはバンク1という事で、このエンジンでは1、2、3番シリンダのことをいう。

また、B2はバンク2の事であり、4、5、6番シリンダ側を示す。

つまり、このエンジンには2つのフロント02センサーがあり、共にリッチ(空燃比が濃い)という信号を出しているという事になる。

データーモニタで空燃比補正値を確認すると、共に−25%をオーバーしていた。

CO、HCを測定するとCOが0.5%、HCが200ppm。O2センサーの信号は0.3〜0.8Vの間で変化しており、空燃比フィードバック制御は行われていた。

データからは、補正値が−25%と大きく減量しているので空燃比が濃いということが分かる。(理想は±10%以内)

しかし、CO・HCの数値からは極端に濃いとは言えない。

それは、O2センサーの信号が0.3〜0.8V間で変動していることからも分かる。(濃過ぎれば1V付近の電圧になりCOがかなり出る。)

これらを合わせて考えると、実際には濃いのだが、空燃比の補正によってぎりぎりO2センサーの値が0.3〜0.8V間になるように制御が働いているようである。よって、CO、HCがあまり出ていないようだった。

では、この濃くなっている原因だが、エアフロメーター、水温センサー、燃圧、インジェクタからの燃料漏れ等が考えられる。

また、プレッシャーレギュレータがあった時代の古いエンジンでは、プレッシャーレギュレータ内のダイアフラムが破れ、そこから燃料を吸い込んでいることも考えられる。

しかし、このエンジン(D-4エンジン)のような筒内噴射エンジンでは、もう1つのことが考えられる。それは高圧ポンプからの燃料漏れである。

筒内噴射エンジンでは、圧縮行程時に燃料を短時間に噴射しないといけないので、燃圧をかなり高圧(8〜13MPa)にしている。

それを作り出しているのがカムシャフトによって駆動される高圧ポンプである。(図1)

高圧ポンプのシールが不良になると、ガソリンはシリンダヘッド内に漏れ、気化したガソリン成分はブローバイガスとして吸入される。よって、リッチとなるのである。

これを調べるのに便利なテスターが排気ガステスターである。

通常、排気ガステスターはCOとHCを測定するものであるが、ガソリンの主成分はHCなので、排気ガステスターでガソリン成分の検出が出来るのである。

点検方法は、エンジン停止後、オイルフィラーキャップを外し、そこに排気ガステスターのプローブを差し込むのである。

通常、この方法で測定すると、1000ppm以下のHCであるが、このエンジンは7600ppmと明らかに異常値を示した。

これだけの数値が出るという事は、高圧ポンプからの燃料漏れが疑われる。

ただし、何かの要因で濃い状態が長く続くと、ブローバイガスに含まれた燃料によりエンジンオイル内に燃料成分が混 じり、HCが多く出る可能性もあるので、必ずしも高圧ポンプからの漏れとは100%断定できない。

よって、エアフロメーターや水温センサーなど、他に濃くなる原因がないかを調べ、特に問題がなかった場合、高圧ポンプの不良と判断する。

この車も濃くなる要因を調べたが、特に問題なかったので高圧ポンプを交換することにした。

高圧ポンプとエンジンオイル交換は依頼者の工場で行ってもらったが、交換後はこのHCの数値は正常になったようである。

なお、インジェクタからの燃料漏れが疑われる場合は、プラグを外して気筒ごとのHCを測定すれば漏れている気筒が分かる。(筒内噴射エンジン以外では吸気バルブを開いた状態での点検が必要。)

筒噴射内エンジンの高圧ポンプからの燃料漏れは、トヨタ、日産、スズキでも数台経験済みであり、ラフアイドル、アイドル時エンスト、始動性不良等々、様々な症状を発生する。

《技術相談窓口》


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