今月はO2センサーに関するトラブル事例を紹介する。
【事例1】
排気ガス濃度が高く継続検査にパスしないという平成14年式キャリー(車両型式LE-DA63T、エンジン型式K6A)。排気ガス濃度はCOが3.2%、HCは370ppm。この年式だとCOは2%以下じゃなければいけない。(HCは500ppm以下。)
COが多いという事は、空燃比(燃料
と空気の割合)が濃いという事を示している。
空燃比制御の様子をスキャンツールのデータモニタで調べると、O2センサーの信号は0Vのまま変化せず、空燃比補正値がかなり増量されていた。これはおかしい。
O2センサーは一種の排気ガステスターであり、理論空燃比より薄いと0V付近の電圧になり、理論空燃比より濃いと1V付近の電圧を発生する。(図1)
よって、O2センサーの電圧が0Vという事は、空燃比が薄いという事を示しているのだが、排気ガステスターは3.2%と濃いという数字を示している。どちらが正しいかと言えば、排気ガステスターである。
O2センサーの故障により、本当は薄くないのに薄いという間違った信号を出したことにより、ECUは増量側に補正し、その結果、排気ガスが増えたのである。
O2センサーを交換するとCOは0.1%、HCは10ppmと基準値内に収まった。
【事例2】
アクセルペダルを踏んでも全く吹き上がらなくなることがあるという平成19年式ハイゼット(車両型式S200V、エンジン型式EF-SE)。
不具合発生時のデータモニタを調べると、O2センサーの電圧は1.1Vのまま変化しなかった。
また、その時の空燃比補正値はマイナス25%と、ほぼ最大減量を行っていた。
O2センサーは前述のとおり空燃比(空気と燃料の割合)を電圧で表すもので、一般的には0〜1の間で変化をする。(理論空燃比より薄いと0V側、濃いと1V側)それが、この車は1Vを超えていたのである。
基本的にO2センサーの電圧は1Vを超えることは無く、この時点でO2センサーの不良が疑われた。
車を停車し、レーシングを行ったが1.1Vのままだった。
これでO2センサーの不良が確定した。
通常、レーシングすると、回転が下がる時は0V付近まで下がるからである。
O2センサーの電圧が1.1Vということは、本当に濃いのであればいいが、濃くもないのに濃いという間違った信号がECUに入力されれば、濃すぎるという事でECUは燃料を減量するのである。(今回はマイナス25%)
このトラブルは、O2センサーの誤信号により、かなりマイナスに補正したので燃料不足となったようである。
O2センサーは空燃比を調べるのに大事なセンサーであり、特に燃料系のトラブルに関して重要なヒントをくれるセンサーである。
ただし、整備士には、その信号が正しいかどうかの判断を行うことができる目が必要である。
簡単な方法としては、O2センサーの電圧点検と、排気ガステスターでのCOの測定を行うことである。
共に空燃比を表すものなので、2つの結果は同じでないといけない。
もし、これが違う場合は、O2センサーの不良という事になる。
もちろん、排気ガステスターが壊れている可能性もあるので、2つの結果が違う場合は、テスターが正常かどうかを他の車などを使い確認する必要がある。
この2つの事例は、O2センサーの特性を理解すれば解決できたはずである。
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