修理費用を安く抑えるために、中古部品を使う事は多いと思うが、今回はその事が災いした事例を紹介する。
【事例1】
アイドリングが保てず、アクセルペダルから足を離すとエンストしてしまうという、平成13年式のホンダ・ステップワゴン(車輌型式LA-RF3、エンジン型式K20A、走行距離12万km)で、スキャンツールでISCV(アイドル・スピード・コントロール・バルブ)の開き具合を点検した結果、制御は行われているにもかかわらず、エンジン回転が変化しないのでISCV不良と判断して、それが取り付けられているスロットル・チャンバーAssyを中古品と交換したところ、今度は今までと逆にエンジン回転が1,500rpmから下がらなくなったという事で、車が持ち込まれた。
スロットル・チャンバー入口のバイパスエアの取り入れ口の孔を塞いでやると、エンストしそうな位まで下がるので、ISCVが開き過ぎていると推測する。
スキャンツールでこの時の制御の様子を見ると、全閉に近い数値である事からISCVが機械的に開いたままになっている事が想像できる。
取り外して調べてみると、図1に示すようにロータリー・バルブがスラッジやカーボンなどのデポジットによって、固着していた。
これによって、アイドル回転速度制御が正しく行われていなかったものである。
部品を交換する前の物は、閉じ側で固着していたためにエンストしており、交換した中古部品は開き側で固着していたために、回転が高い状態になってしまったのである。
新品のISCVに交換していたら、このような二度手間は防げた次第。
※ホンダでは、ISCVの事をRACV(ロータリ・エア・コントロール・バルブ)と記述している。
【事例2】
図2に示すスピード・メーターを含むメーターAssyを中古部品に交換したら、エンジンが掛らなくなったという、平成25年式のダイハツ・ムーヴラテ(車輌型式DBA-L575S、エンジン型式KF、走行距離25万km)の事例。
クランキングしても、まったく掛りそうな気配も無いとの事で持ち込まれた。
メーターパネルを交換した理由を尋ねてみると、年式の割に過走行車でそれなりの値段でオークション購入をし、後日走行距離の少ないメーターをインターネットで探した中古部品と交換したとの事である。
DTC(ダイアグノーシス・トラブル・コード)を調べてみると、「UO156」(メーターECUとの通信異常)を記憶しているだけで、エンジンにはなにも異
常は検出されていなかった。
基本点検を行ってみると、点火火花とインジェクタが作動していなかった。
メーターパネルを以前の物に戻してクランキングすると問題なく始動できる事から、やはり交換したメーターパネルに問題があるものと思われる。
部品番号は同一で、イモビライザー機能は装着されていないのに、なぜこのような事が起きるのだろうか。
ディーラーに問い合わせてみても、そのような事例は経験が無いとのことで、メーカーに確認して回答をもらう事にした。
その結果、イグニッション・スイッチがメカニカル・キーと、プッシュ・キーの車とで仕様登録を新車時に行っており、メーターはいずれも同じ物を使っているが、一度どちらかに仕様登録を行った物は、再登録ができないようになっているらしい。
スキャンツールの作業サポートで「メーター仕様の初期化」項目があるが、前述した理由なのか、変更はできなかった。
最近の車のECUは、複数の物がCAN通信で接続されているので、それぞれが持つIDが正しいものでないと、正常に機能しないようになっているのは周知のとおりである。
やはり、メーターを新品に交換して初期登録を行う以外に方法はなさそうである。
本来、走行距離の巻き戻し等の不正を防止する目的でこのような仕組みになっている訳なので、アナログ時代の常識は通用しない事を熟知しなければならない。
文字通り『下手の考え休むに似たり』である。
《技術相談窓口》
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