エンジン警告灯が点灯するという平成26年式ティアナ(車両型式DBA-L33、エンジン型式QR25)のトラブル事例を紹介する。
実はこの車、依頼者の工場に来る前に他社でも点検を行っており、電子制御式スロットルシステムに異常があり、修理代が8万円近くかかると言われている。
あまりにも高額のため、セカンドオピニオン的に依頼者の工場に持ち込まれた次第である。
ユーザーさんの話では、エンジン警告灯が点灯していても、特に不調は感じないのでそんなに大したトラブルではないのではないかと思っているようである。
まずは症状を確認すると、持って来た時にはエンジン警告灯は点灯しており、レーシングでの吹き上がりは若干鈍いようだったが、最高回転数までは吹き上がった。
通常、電子制御式スロットルシステムに異常があると、制御を止めてしまい吹き上がらないことが多いのである。
本当に電子制御式スロットルシステムに異常があるのかと、スキャンツールでダイアグノーシスの点検を行うと、DTC「P2119」(スロットルアクチュエータB1)と、やはりスロットル系のトラブルコードを表示した。
DTCで異常コードを表示した場合、まずはそのコードの異常検出条件を調べる必要がある。
ただ、「水温センサー電圧低い」や「吸気温センサー電圧高い」といったものであれば、センサーを含めた回路の断線やショートなのでわざわざ調べる必要はないが、今回のように「スロットルアクチュエータB1」と言われても、「どういった状態で、どの端子の電圧がどのようにおかしい時に異常と判断する。」ということが分からなければ、点検のしようが無いのである。
ということで、さっそく検出条件を調べてみると、次のようになっていることがわかった。
A.リターンスプリング不良により電子制御スロットルが正常に作動しない。
B.フェイルセーフ中のスロットル開度が規定値から外れている。
C.電子制御スロットルが開固着している。
と、大雑把なことしか書かれていなくて詳細は不明だった。
ただ、どの項目もスロットルバルブの位置が正常な状態になっていないことを示していた。
スキャンツールのデータモニター機能で、スロットルバルブ関係のデータを調べると、暖機後のアイドル状態で、スロットル位置信号は約0.76Vだった。
今までに多くの日産車のデータを見てきたが、0.76Vは明らかに高過ぎる。
この電圧が高いということは、スロットルバルブ周りがスラッジ等で汚れており、吸入空気量が少なくなっていることを意味する。
吸入空気量が減ればアイドル回転は下がるが、ECUがそれを補正するためにスロットルバルブを開かせる。
これの繰り返しで少しずつスロットルバルブが開いてきたのである。
この通常では有り得ない開度をECUは異常と判断したのかもしれない。
スロットルボデーを外すと、かなりのスラッジが堆積していた。
綺麗に清掃し、急速TAS学習を行ってデータを確認すると、アイドル時、0.76Vだった電圧が0.56Vまで低下していた。
この状態で試乗したが、警告灯は点灯しなかった。
スロットルバルブや周辺の清掃だけで良くなったのである。
やはり汚れが原因だったようである。
電子制御式スロットルシステムのトラブルの場合(センサー系不良を除く)は、まずはバルブ周辺を清掃してみることである。
ちなみに、このDTCのフェイルは表1のようになっており、実際のアクセルペダルの踏み込みに対して遅くなるように制御していた。
このため、若干吹き上がりが鈍かったようである。
電子制御式スロットルの不具合発生時は、ある回転数までしか吹き上がらないという先入観は持ってはいけないようである。
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