先月号ではDTC(ダイアグノーシス・トラブル・コード)の検出条件を知ることが大事だという事例を紹介したが、今月号では電子制御システムでの部品交換時等で必要な作業(学習作業・リセット作業)を行うための条件を知っておくことが大事だという事例を紹介する。
車はエンジン警告灯が点灯するという平成17年式ボンゴ(車両型式SKF2T、エンジン型式RF)ダイアグノーシスを点検すると、コードP167B(燃料噴射量学習未実施)を表示。
一旦消去しても、すぐに同じコードを表示した。
この燃料噴射量学習を調べると、「性能維持のために定期的(1年毎)に燃料噴射量学習(補正)を実施する必要がある」となっていた。
また、「PCM、サプライ・ポンプ、コモン・レール、フューエル・インジェクタまたはキャタリスト・コンバータを交換した場合、および決められたDTC表示時は必ず実施する。」ともなっていた。
燃料噴射量学習の方法を修理書で確認してみると、スキャンツールを使う方法と使わない方法があった。
スキャンツールを接続し作業サポートの項目を見ると、燃料噴射量学習の項目があった。
さっそく実施してみたが学習が開始されない。何度か試したが同じである。
手動での方法も試してみたが、学習が開始されたことを示す合図であるグロー・インジケータ・ライトが点滅しなかった。
学習が開始されないとなると、学習を行うための条件が揃っていない可能性があった。
もちろん、学習前には一通りは確認したつもりだが、再度確認することにした。
スキャンツールを使う場合の条件は表1にある12項目である。
それぞれの項目が何を表しているのかを修理書を参考しながらスキャンツールのデータモニタで確認した。
すると、「INGEAR」の項目がONのままであった。
学習前にも条件を確認したのだが、その時は温度や圧力等の数値をデータモニタで確認しただけであり、ギヤ位置はニュートラル状態なのでいいだろうと思い、データでの確認はしていなかったのである。
この「INGEAR」とは、トランスミッションがニュートラル状態なのか、どこかのギヤに入っているかを表す項目である。
このINGEARの検出は、トランスミッション部のニュートラルスイッチで行っているので点検を行った。
すると、常時ONのままだった。
実際のギヤ位置としてはニュートラル状態だったが、スイッチが常時ONだったせいでECUはINGEAR状態と判断していたようである。
このせいで、学習の実施条件に当てはまらずに学習が開始しなかったようである。
ニュートラルスイッチを交換し、燃料噴射量学習を実施すると、学習ができ警告灯も消灯した。
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