EPSランプが点灯し、ハンドル操作が重いという平成17年式ライフ(JB5、P07A)のトラブル事例を紹介する。
依頼者の工場では、EPSランプが点灯していたのでダイアグノーシスを点検しよう思ったが、所有しているスキャンツールがEPSに対応していないという事で、デーラーでDTCを調べてもらったそうである。
その結果、DTC「51-04」(温度センサ系異常)だったので、ステアリングギヤボックスASSYを交換したそうだが、良くならないという事で持ち込まれた。
念のため、こちらでもダイアグノーシスを点検したがDTC「51-04」(温度センサ系異常)を表示した。
温度センサ系の異常であれば、原因は温度センサ、温度センサ系の配線、ECUの3つしかないはずである。
通常、温度センサはモーターの温度を検出しているのでモーター部にある。
この車のモーターは、ギヤボックスにあるので、その近くにあるだろうと思い調べたが、いくら探しても見つからない。修理書や配線図で確認したが、やはり温度センサなんてなかった。
このコードの点検手順はどうなっているのかと思い、DTC「51-04」のフローチャートを調べてみたが、一度も温度センサの点検は出てこなかった。
DTC「51-04」のページには、このコードの他にDTC「51-01」(トルクセ
ンサ診断)、DTC「51-03」(トルクセンサ急変診断)、DTC「51-05」(トル
クセンサコイル診断)のコードも記載されており、点検手順は全て同じになっていた。
また、その内容は、ほぼトルクセンサに関する点検しかなかった。
これらのことから、この車のEPSシステムがどうなっているのかは不明だが、トルクセンサの信号からモーター温度を推定して異常検出を行っているのではないかと思われた。
このフローチャート通りにトルクセンサに関する点検を行ってみることにした。
まずはトルクセンサの単体点検を行ったが断線、短絡はなかった。
次にトルクセンサ〜ECU間の配線の点検を行うと、3本のうち1本に導通が無かった。
断線の可能性はギヤボックス側が高いと思い調べると、トルクセンサ近くでハーネスのカバーが破損している個所があり、その中の1本の配線が断線していた。
配線をハンダでつなぎ直すと、EPSランプは消灯し、電動パワーステアリングも効くようになった。
ダイアグノーシスで表示したトラブルコード名だけを頼りに整備を行うと、今回のように無駄な部品交換につながる可能性がある。
交換するにしても、不具合と思われる部品の単体点検ができるのであれば、まずはその部品が本当に悪いかどうかの点検を行うべきである。
DTCを表示した場合は、修理書等でDTCの検出条件やフローチャートでの点検方法を確認することが大事である。
ただ、今回は実際には温度センサを使っていないのにDTCに「温度センサ系」というコード名を使っていることに対しては疑問に思う。
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