平成27年式ホンダ・フィット(DBAGK3)のバッテリを交換したところ、エンジン警告灯とアイドリングストップ警告灯(橙)とEPS警告灯が点灯するようになったという電話相談。
DTCを確認するとPGM-FIで「200-4」(バッテリセンサ)と「P154B」(バッテリセンサ特性異常)を、EPSで「U3003-92」(バッテリ性能低下)を検出しており、DTCの消去を実施しても消去できないという。
考えられることとしては、過去の実践整備事例でもあったことだが、DTCの消去が診断機ではできずに、特殊な操作を必要とするパターンである。
また、可能性は低いが、診断機がDTCの消去に対応していないということも考えられる。
後者は他の診断機が用意できれば、その診断機で消去できるか確認することになるが、他の診断機を用意できないためにいったん保留し、問診から始めることとした。
新車からのバッテリで、バッテリの劣化が疑われたためにバッテリを新品に交換したようである。
バッテリ交換の際にバックアップを取ったか聞くと、様々な電装品のリセット作業が必要になることを嫌い、OBDコネクタ経由でバックアップを取りながら作業をしたそうだ。
バックアップ用の電源は問題ないか問い合わせると、電圧は9V前後だが、ナビもリセットされなかったし大丈夫ではないか?と言っていた。
以上のことから、作業内容とDTCの関連性を確認するため、まずはDTC「200-4」について調べたのだが、そのようなDTCはどのシステムの修理書にも存在しておらず、調べられなかった。
このような場合は、診断機のソフトの問題も関係してくるため、これ以上はどうにもならない。
気を取り直して、「P154B」(バッテリセンサ特性異常)について確認。
バッテリセンサの電流を監視しているようで、今回のように、バックアップをOBDコネクタから供給すると、電気が電流センサを通らないので、異常を検知したものと思われる。(修理書上では警告灯は点灯させないとなっていたが・・・)※参照
また、バッテリに関連するシステムのDTCが検出されたため、アイドリングストップの橙色の警告灯が点灯したものと推測される。(この辺りも修理書には詳しく書かれていない)
EPSの「U3003-92」(バッテリ性能低下)に関しては、検出条件の一つに「バッテリ電圧9.1V以下が一定時間継続したとき」となっているため、バックアップ用電源電圧が問題だったと考えられる。
作業した内容が今回の不具合原因である可能性が高くなった。
ご存じのように、最近の自動車はナビをはじめ、様々な電装品が装着されているために、バッテリを切り離すとリセット作業が必要となるシステムがある。
この作業が面倒であるためにバッテリ交換時にバックアップ電源を接続するのだが、今回はその作業が不具合を作り出してしまったようだ。
修理書を確認してもDTCの消去に関する特別な操作は記載されていなかったので、バッテリを交換した際の「12Vバッテリ内部抵抗値のリセット作業」を行うよう説明した。
後程連絡があり、リセット作業後に正常になったとのこと。
バックアップ電源はバッテリ交換時のリセット作業をしなくてもよいように接続するものだが、今回のようにそのことが原因で新たなトラブルを作ってしまっては元も子もない。
バックアップ電源を使用する際は、しっかりとした電圧が確保されている電源を使用するよう気をつけてほしい。
※「P154B」の検出条件は、イグニッションONの状態でDTCの検知を行う。
今回の事例では、イグニッションをONしたかどうか記憶が定かではないとのこと。
従って、修理書の検出条件通りならば、イグニッションをONにしなければ「P154B」は検出されないと考えられるが、バッテリ交換後の「12Vバッテリ内部抵抗値のリセット作業」は必要なので注意。
《技術相談窓口》
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