発進および加速時に、以前よりパワー不足を感じて、メーター内のMILが点灯するという、平成22年式のハイエース・コミューター(車輌型式ADF-KDH223B、エンジン型式1KD-FTV、走行距離35万km)のトラブル事例を紹介する。
DTCは複数検出しており、いずれもVNターボチャージャーの、可変ノズルの開度センサ信号の異常を示すものであった。
このDTCが検出されると、フェィルセーフによってターボチャージャーが機能しなくなるので、パワー不足になってしまう。
依頼者は既にターボチャージャーを交換してみたが改善されず、ターボチャージャーの可変ノズルを駆動する、ターボモータ・ドライバも追加で交換したが、結果は同じだったということで、現車が持ち込まれた。
VNターボのシステムは図1に示すとおりで、エンジンECUからターボモータ・ドライバを経由して、ターボチャージャーの可変ノズルを制御するようになっており、従来のウエスト・ゲート・バルブによる過給圧制御ではなく、さらに幅広いエンジン回転速度領域で最適な過給圧が得られるのが、その特徴である。
スキャンツールで、DTCが読み取れる状態にしてエンジンを回してみると、最初はひとつしかなかったDTCが、次第に増えてきた。
その内容は図2に示すように、ノズル開度センサに関するものばかりであった。
ノズル開度センサの信号電圧は、スキャンツールでデータ・モニタできないので、ターボモータ・ドライバ部分の端子に電圧計のプローブを当てて、測定してみた。
本来であれば、2.5V前後の電圧であるべきものが、0Vや5Vに近い値が検出された。
このことによって、短絡故障や断線故障のDTCが検出される訳である。
エンジンを停めて、キースイッチONの状態でセンサ部分のコネクターを触ってみると、電圧計の数値が大きく変動したので、この部分に問題があると考えられる。
コネクターを抜いて、フィメール(メス)端子にメール(オス)端子に相当する物を差し込んでみたところ、ほとんどかん合圧力が感じられず、下に向けると落下する状態であった。(図3参照)
コネクターに取り付けられている、6本全ての端子が同様であった。
部品同士の接続には配線が使われており、その部分の接続状態を調べるには、図4のような基本的で地道な方法しかない。
図5に示す細いツールを使ってコネクターから端子を抜き取り、メーカーが部品設定しているリペア・ハーネスに取り換えて、車輌ハーネスに接続し直すと信号電圧が安定し、MILが消灯してターボチャージャーの過給圧も正常になった。
《技術相談窓口》
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