発進および加速時に、「ピュー」あるいは「キューン」という音がするという、平成20年式のハイゼット・アトレー・ワゴン(車両型式ABA-S321G、エンジン型式KFターボ付、走行距離9万5千km)のトラブル事例を紹介する。
診断を持ちかけてきた工場のメカニックに、これまでの経過を確認したところ、ベルトのスリップ音ではないと判断し、ターボチャージャーを交換したとのこと。
しかし、その後も音は今までと同じように発生するので、当会に持ち込まれた次第。
スキャンツールを接続して走行してみると、前述のような運転状態でターボチャージャーの過給圧が上昇する時と、アクセルペダルから足を離して減速している場合にも、同様の音が確認できた。
この時の過給圧の数値に問題がないことから、吸気系統からの過給圧もれではないことがわかる。
加えて、減速時にも音が発生する事象からも、そのことが裏付けされる。
異音が発生しない時の状況は、アクセルの開度が一定であり、異音が発生する時はその開度が変化している時である。
こう考えると、エンジンに取り込まれる吸入空気量が変化した時に、異音が発生すると推測される。
図1に示す、スロットル・バルブの下流からシリンダまでの間に的を絞って点検することにした。
インテーク・マニホールドに接続されたホース類を入念に調べていくと、ブローバイ・ガス還元装置用のゴムホースが潰れかけていた。
図2に示すように、ホースの外周を覆うゴムが破損して、ホースがカーブした部分で平らになって潰れかけていた。
これによって、ロッカー・カバー内部からPCVバルブを通過して、インテーク・マニホールドへと流れる、ブローバイ・ガスの流量変化が大きい運転時に、ホースの潰れかかった部分の流速が増すことで、「笛吹き現象」が起きていたものである。
大気圧を境にして、正圧側と負圧側の圧力が作用するホースなので、耐久性が要求される部品である。
ホースを新品に交換して試運転した結果、異音は解消した。
「ブローバイ・ガス還元装置の配管の損傷」については、自家用乗用車の場合2年ごとに点検しなければならないようになっているので、その作業を怠ってはならない。
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