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2020年10月
スターター・モーターを取り換えてもクランキング不能

プッシュ・スタートのボタンを押しても、スターター・モーターが回らず、エンジンが始動しないという平成24年式の日産モコ(車輌型式DBA-MG33S、エンジン型式R06A、走行距離8万6千km)のトラブル事例を紹介する。

技術相談を持ちかけてきた工場で、既にスターター・モーターは交換されており、点検は制御回路に絞られることになる。

この車には最近主流になってきた、プッシュ・スタート式のイグニッション・スイッチが装着されており、ブレーキ・ペダルを踏んだ状態からボタンを押しても、なんの反応もない。

この時メーターパネル内の各種ランプは、すべて点灯している。

もう一度ボタンを押すとイグニッションOFFになり、運転席のドアを開けるとメーター内の鍵の形をした警告灯だけが点灯したままになっていた。(図1参照)

通常このランプは、イグニッションOFF時に点灯することはないので、なんらかの異常を知らせていると思われる。

スキャンツールを接続して各ECUのDTCを調べたところ、BCMに「B1162」が検出されていた。

このDTCは、ステアリング・ロック・ユニット内部異常を示すものである。

ステアリング・ホイールを操作してみると、左右に回すことができて、ロックが作動していないことが確認できた。

ステアリング・ロックは従来のメカニカルキー式のようなものではなくて、電気式アクチュエータによってステアリング・シャフトを固定する構造である。

プッシュ・スタート式イグニッション・スイッチの場合の、一連の作動(ルーティーン)は図2に示すとおりで、エンジンを停止した際にステリング・ロックが作動していることが、次のエンジン始動の条件であり、この条件が成立していないがために、スターター・モーターが回らなかったのである。

したがって同様の不具合に遭遇した際には、ステリング・ロックの作動状況を確認することが、重要なポイントである。

アクチュエータからBCMまでの間の配線に問題がないことが確認したうえで、アクチュエータを交換することにした。

部品を注文すると、1週間余りかかるとの回答であった。

待ち望んだ部品が届いた日に、今回の不具合がサービスキャンペーンによる無償修理になることがあきらかになった。(図3参照)

しかしアクチュエータはすでに取り外していたので、こちらで組み付けて正常に機能することを確認して、修理費用の清算をディーラーにするように説明しておいた。

《技術相談窓口》


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