走行中に、スピードメーターの指針が振れたり、まったく動かなくなったりするという、平成13年式のスズキKei(GF-HN11S、エンジン型式F6A、走行距離9万7千km)のトラブル事例を紹介する。
車速信号異常のDTCを検出していたので、迷うことなく車速センサーを交換してみたが、再発したということで、当会に持ち込まれた。
車速信号をオシロスコープで波形観測してみると、Hi信号時の電圧が本来の数値よりも低いことが判明した。
開放時の電圧が低いということは、どこかに短絡しかかっているか、ECU不良のいずれかが考えられる。
車速センサーのコネクターを外した状態で、エンジン&A/T&A/Cコントローラの端子電圧を測定すると、同じように低い電圧が表示された。
回路は図1のようになっており、車速信号はスピードメーターにもつながっている。
スピードメーター部分のコネクターを外して測定しても、その値に変化がないことから、信号回路の配線が短絡(地絡)しかかっていると推測できる。
すべてのコネクターを外して、信号線と車体間の絶縁を調べたところ、約40Ωの抵抗が確認できた。
ここは本来であれば、∞Ωでなければならない。
まちがいなくどこかで短絡(地絡)が発生しているので、サーキットテスターと睨めっこしながら、ワイヤーハーネスをゆすってみた。
その結果、インストパネル付近で数値が大きく変化した。
範囲を絞り込むために慎重に調べていくと、図2に示す左側のコネクターが怪しいので、該当する紫色の配線を凝視すると、配線の被覆が破れて中の芯線が剥き出しになっていた。
何かに擦れてこのようになったと思われるので、その近辺を点検してみると、コネクターを固定するはずの金属製のブラケットの角で、配線が擦れていたことが判明した。
本来であれば、このブラケットにコネクターを固定するのだが、何らかの理由で外されたままになったと考える。
車を持ち込んだメカニックに過去の整備歴を確認したところ、以前ヒーターコアを交換したことがわかった。
おそらくその際に元どおりに組み付けなかったことが、今回の不具合の原因になったと考えられる。
車速信号が、実際の速度とかけ離れた数値になるため、A/Tの変速制御にも影響がおよんでいたことは、言うまでもない。
人為的なことが原因の不具合は、それを究明するために多くの時間を費やしてしまうので、むだなことを省く意味からも日頃の作業を基本に忠実に行わなければならない。
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