ABSの警告灯が点灯したままで、車検を受けられないとのことで持ち込まれた、平成24年式の日野レンジャー(車輌型式BKG-FC7JKYA、エンジン型式J07E、走行距離4万7千km)の事例を紹介する。
スキャンツールで調べた結果、「C0256」(左後輪ソレノイド系異常)のDTCを検出していた。
乗用車の場合であれば、ABSのコントロール・ユニット(ECU)はアクチュエーターと一体になっているが、中型トラックの場合はそれらが別々に装着されている。
したがって、ソレノイド・コイルが内蔵されているアクチュエーターから、ECU間のどこかに異常があると考えられる。
図1に示す、アクチュエーター部分の配線コネクタを外して、ソレノイド・コイルの導通点検を行った結果、16Ωの正常値であった。
次にECU部分の配線コネクタを外して同様の点検を行ってみると、5MΩという極めて高い数値であった。
このことから、両者をつなぐ配線が断線に近い状態であることがわかった。
この間は、図2に示すとおり離れた所にあり、途中にジョイント・コネクタが存在しているようなので、その辺りを調べてみたが、問題はなかった。
ジョイント・コネクタよりも下流側の抵抗値が大きいことから、配線の途中になんらかの問題があると推測される。
サーキット・テスターを接続したままにして、配線の束を隈なく揺すっていくと、アクチュエーター付近でその数値が大きく変化することがわかった。
さっそく配線の束を解いて調べてみると、途中で配線の色が変わっており、その接続も図3のとおり無造作にねじったものであった。
なんの理由でこの回路を切り継いだのか知る由もないが、このようないい加減な処置をされると、その後始末をする者としては、迷惑この上ないことである。
不良部分をハンダ処理して不具合は解消したが、何回かエンジンを始動したあとに、再びABSの警告灯が点灯した。
DTCは「C1241」(電源電圧異常)を検出していたので、クランキング時のバッテリー電圧をオシロスコープでモニターしてみると、本来の電圧の半分まで低下していた。(図4参照)
これは全ての車に共通することだが、ABSやSRSのような作動頻度が高くない装置のECUは、電圧変動を厳しく見張っているので、『クランキングできるからバッテリーは大丈夫』という過去の考え方は通用しないのである。
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