加速時に息つきを起こすという平成9年式ジムニー(JA22W、K6A ターボ)
のトラブル事例を紹介する。
依頼者の工場でも様々な点検や部品交換を行っていた。
また、インタークーラーを外すと、症状が出ないということで、タービン自体も交換している。
症状や問診から最も考えられるのは、やはり過給圧の上がり過ぎによる燃料カットである。
しかし、実際に試乗してみると、症状が過給圧の上がり過ぎによる燃料カットとは違うのである。
普通に加速した時は過給圧による燃料カットとあまり変わりがないのだが、比較的ゆっくり加速すると、あるポイントから「ドドドドッ」という感じで、不具合が長く続くのである。
なんかおかしいと思いながら、テスターをセットして過給圧を測定すると、通常に加速した時は約0.4〜0.6kg/cm2でも症状が発生した。
最大でも0.6kg/cm2であり、過給圧の上がり過ぎによる燃料カットではなかった。
過給圧を圧力センサーやウェストゲートバルブ部でも測定したがほぼ同じであった。
また、ゆっくり加速した時の「ドドドドッ」となっている時の過給圧に至っては、0.4kg/cm2以下である。
こうなると過給圧が原因ではないということになる。
インタークーラーを外して症状が出なくなる場合、確かに過給圧の上がり過ぎが考えられるが、実は、もう一つ考えられることがあるのである。
それは、点火系のリークやコイルの容量不足である。
一般的に、火花の飛び易さはプラグギャップ部の圧力によって変化する。
圧力が低いほど火花は飛び易く、圧力が上がると飛びにくくなる。
火花が飛びにくいという事は火花を飛ばすために必要な要求電圧が上がる。
よって、加速時に失火する場合は、どこかに火花が逃げやすいところがあってそこからリークしている可能性が高い。
ターボの場合は過給がかかるのでより顕著になる。
また、IGコイルの容量不足の場合も同様に失速する。
この車の場合、IGコイル、プラグコード、プラグは交換済みである。
点火系の部品で交換していなのはディスキャップとローターなので、そこからリークしていないか調べると、写真にあるようにローターに穴が開いておりそこからリークしていたようである。(リークが続いたので穴が開いたと思われる。)
原因はローターからのリークであった。
ローターに穴が開いているが、ローターの中心部(センターピースが接触する部分)からこの穴までの距離は約10mm。
それに対して実際に火花が飛ぶプラグギャップは約1mm。
プラグギャップの方が火花が飛びやすそうだが、プラグギャップ部には大気の約10倍の圧力がかかっているので、1mmとはいえかなり飛びにくい状態になっている。
それでも、通常時は10mm離れたところに飛ぶよりはプラグギャップの方が飛びやすいのでプラグに火花が飛んで燃焼が起こる。
それが、過給がかかるとプラグギャップはより火花が飛びにくくなるので、10mm離れたローターの方が飛びやくなり、そちらにリークし失火したものと思われる。
これがひどくなれば、アイドル時でも失火が起こるし、最悪始動不能にもなる。
加速時のみに失火が起こる場合は、過給圧と点火系のリークの点検する必要がある。
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