走行中にメーター内のシフトインジケータのPとDが同時に点灯することがあり、またドアを開けていないのにルームランプが点灯することもあるという平成21年式ミラ(車両型式L285S・エ
ンジン型式KF)のトラブル事例を紹介する。
走行に支障があるような不具合は無いとのこと。
入庫時に試乗して症状を確認するが再現しない。
スキャンツールで自己診断を調べるとP0705(シフトポジション多重/無入力フェイル)が残っていた。
これはインヒビタSWからのシフト位置信号が、CVTコントロールユニットに2個以上入力、または1個も入らない時に出るコードである。
ユーザーの訴えのPとDが同時に点灯するという内容とつじつまが合う。
疑われるのはインヒビタSWであるが、既に新品に交換されている。
不具合が起きる状況を詳しく聞いてみると、毎日発生するわけではなく、雨の日や雨の翌日によく発生するとのこと。
この話から、不具合症状のシフトインジケータとルームランプに共通する箇所に雨水の侵入が無いか確認することにした。
配線図を見ると、インヒビタSWからCVTコントロールユニットの中間コネクタと、ドアカーテシSW間からボデー統合ECUの中間コネクタが、助手席足元のサイドジャンクションブロック部に集まっていることが分かった。(写真1)
サイドジャンクションブロック部を見てみると、5個あるコネクタの内、2個のコネクタに被水した痕があり、青錆が出ている箇所があった。(写真2)
コネクタを外して中を見ると、やはり浸水した痕があり青錆が出ていた。
配線図の端子配列で青錆が出ている端子を確認すると、インヒビタのPレンジとDレンジの信号線、ドアカーテシSWの配線だった。
この不具合現象は、雨天時に雨水が室内に流れ込み、サイドジャンクションブロック部のコネクタに浸水して、コネクタ内部で短絡が発生することにより、PレンジとDレンジの信号が同時に入力されたり、ドアを開けていなくてもドアカーテシSWの開信号がボディ統合ユニットに入力されていたと思われる。
恒久的な修理としてはサイドジャンクションブロック部と、出入りするハーネスを全て交換することになるが、応急処置として、出来るだけコネクタの端子をきれいにして、水分を除去し、防錆用スプレーを塗布した。
不具合箇所はこれで判明したが、そもそもの雨水の侵入箇所を突き止める必要がある。
被水していたコネクタの上側で浸水しそうなところは、ドアのウェザーストリップ、ルーフモールやガラスのシーリングなどが考えられる。
助手席ドアを開けて内側を見るとウェザーストリップにマスキングテープのような物が貼られていた。同じようにボディ側にも貼ってあった。(写真3、4)
ユーザーに確認すると、助手席のドアとボディの間から雨水が入ってくることがあったので、自分で貼ったとのことだった。
そもそもボディとドアで挟まれることによって雨水の侵入を防ぐ役目のウェーストリップにマスキングテープを貼ってしまったことにより、マスキングテープが作ってしまった隙間から雨水が侵入してきたと思われる。
最初に雨漏れに気付いた時に自分でマスキングテープを貼るのではなく、整備工場で新品のウェザーストリップに交換していればサイドジャンクションブロック部まで浸水しなかったのではと思える不具合であった。
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