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2021年7月
コネクタ内部の液体侵入にはご注意を

エンジンを載せ替えたあとにエンジン警告灯が点灯するようになったという、平成20年式ムーヴコンテ(車両型式DBA-L575S、エンジン型式KF-VE)のトラブル事例を紹介する。

そもそものトラブルは、オイル消費が激しかったためにリビルトエンジンに載せ替えたらしく、そのエンジンも走行距離が3,000km を超えたあたりから異音が出るようになったため、もう一度エンジンを載せ替えたとのこと。

ところが、載せ替えたエンジンも異音が出ていたため、現在3基目のエンジンを組み付ける準備をおこなっている途中なのだが、2基目のエンジンを組み付けて試運転を行う際にエンジン警告灯が点灯し、「P0505」(ISCV系統異常)を検出するようになった。

ISCVを中古に2回交換してみてもDTCが消去できないため、何が原因かわからない状況。

ワイヤハーネスに問題があった場合、組付けたエンジンから再びワイヤハーネスを取り外さなければならなくなるため、その前に点検してほしいという依頼。

ISCV〜ECU間の配線の導通は調べたが、問題はなかったそうだ。

この車両のISCVの回路は図1のようになっている。

ISCVは極性切り替え方式の4極タイプ。

まずISCV単体について点検してみたところ、中古品を含めた3つのISCVのコイルは全て46Ωと問題無く、端子間の短絡もなかった。

よって、ISCVのショートによるECUの不具合も無さそうである。

ワイヤハーネスの導通も点検したが、4本全て1.4Ωと問題なかった。

続いてECUとISCVを取り外した状態で線間ショートを点検したところ、図2に示すISCVの@番端子とB番端子間の導通点検で80kΩ〜800kΩの抵抗値を表示した。

測定値は安定しておらず、常に変動している状況であった。

本来ならば∞Ωを示さないといけないので、この測定値はあきらかにおかしい。

ISCV〜ECU間に中間コネクタは存在しないため、エンジンを載せ替える作業中にワイヤハーネスを挟み込む等してワイヤハーネスを傷つけてしまっていないかを目視で確認してみたところ、傷ついたような部分は無かったが、ワイヤハーネスが何らかの液体で濡れていることに気が付いた。

その液体はECUの接続コネクタにも付着しており、コネクタ内部にも入り込んでいることが確認できた。

まずは付着している液体をエアブローし、ドライヤーで乾かしてみると、ISCVの@番端子とB番端子間の抵抗値が2.4MΩになった。

抵抗値を測定しながらECUのコネクタ内部にブレーキクリーナーを噴射すると、徐々に抵抗値が大きくなり、最終的には∞Ωになった。

ECUに接続されるコネクタ内部に液体が入り込んだことにより、液体経由で端子間が短絡してしまっていたようだ。

ワイヤハーネスが濡れていた部分は主に室内を通っている部分だったため、ヒーター配管からの冷却水漏れなどが考えられる。

そこで相談者にこれまでの経緯を伝えたところ、エンジン載せ替え時にワイヤハーネスが濡れてしまった(作業の過程で)ことには気が付いていたらしい。

しかし、これまでにエンジンを多数載せ替えた経験があり、同様にワイヤハーネスが濡れてしまったこともあったが、このようなトラブルにつながったことがなかったので、特に気にしていなかったとのことであった。

後日きれいにしたワイヤハーネスを取付けて不具合は出なくなったとの連絡を受けた。

本誌5月号の実践!整備事例でも掲載したが、液体がコネクタ内部に侵入すると、思いもよらないトラブルにつながることがある。

整備作業中には必要に応じてコネクタや配線などの養生を行う等して、新たなトラブルを作り出すことが無いよう、今一度注意喚起をお願いしたい。

《技術相談窓口》



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