エンジンの始動性がかなり悪く、エンジンがかかってもエンジン不調だという平成16年式ハイゼット(車両型式S200P、エンジン型式EF-SE)のトラブル事例を紹介する。
また、マフラーから白煙を吐き、ガソリン臭いという。
白煙というと、一般的にはオイル消費かジーゼル車のトラブル時(噴射時期の遅れやグロー回路の不良)が一般的である。
オイル消費での白煙はオイルが焼ける匂いがするので分かるが、今回は、ガソリン車でありオイルの焼ける匂いではなく、かなりガソリン臭いのである。
ガソリン車でガソリン臭く、かつ白煙であればガソリンがかなり出過ぎているとことが予想される。
また、1気筒失火しているようなのでパワーバランステストを行うと2番シリンダが失火していることがわかった。
症状からは、燃料が出過ぎているようなので、インジェクタを調べてみると、インジェクタの作動音が聞こえなかった。
インジェクタの端子電圧を調べると、キーONでインジェクタの電源側は12Vでアース側は約5Vだった。
通常、キーONではインジェクタの端子電圧はそれぞれ12Vである。
それが、電源側の12Vは問題ないが、アース側が5Vということは、インジェクタには約7Vの電圧がかかっていることになる。
エンジン始動後も同じ状態であり、当然、インジェクタは開きっぱなしで燃料が出続けているということになる。
これでは始動性も悪く、エンジン不調になるはずである。
キーONでインジェクタのアース側が5Vということは、配線がアースしかかっているか、ECU内でショートしていると考えられる。
ECU側のコネクタを外してインジェクタ部で電圧を測定すると5Vだった端子が12Vになった。
ということは配線がショートしているのではなく、ECU内でショートしているという事でありECUが不良である。
ECUが壊れた原因がインジェクタ自体の短絡の可能性もあるので、インジェクタの抵抗を測定したが3本ともほぼ同じであり問題なかった。
ECUのカバーを外して内部を調べると、基盤に多量の異物が見られた。(写真1)
また、ケース内から多量の異物が出てきた。
ECUの基盤にある黒い異物は生き物のフンにも見えなくはないが、ケース内から出てきた異物は砂や石のようである。(写真2)
ECUはフロアパネルに近いところにあったので水没の可能性もあったが、依頼者に聞いた限りでは水没はなかったという。
ただ、主に農作業で使う車は、泥で汚れた室内を水道で洗ったりすることもあるようなのでその時に入った可能性も無くはないそうである。
この汚れが原因という確証はないが、点検結果からはECU不良には間違いなかった。
念のためにと、ECU内のトランジスタを点検すると、3つ並んでいるトランジスタがあり、これらがインジェクタ用と思われたので調べると、このうちの1つがショートしていた。
このトランジスタと、作動音がなかった2番のインジェクタを制御しているECUの27番端子の導通を調べると、ほぼ0Ωだった。
このトランジスタが2番シリンダのインジェクタを制御しているようであり、このトランジスタがトラブルの原因だった。
ECU を交換すると正常になった。
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