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2021年9月
エンジンからの異音

補機ベルトが滑っているような甲高い異音がでるという、平成7年式パジェロ(車両型式Y-V26WG、エンジン型式4M40)のトラブル事例を紹介する。

異音について話を聞いてみると、エアコンコンプレッサ駆動用ベルトを外すと音が止むことから、ベルトに鳴き止めグリスを塗布し、念のためテンショナも交換して組付けたが、20分程走行すると再び異音が発生するようになった。

ベルト不良も考えられるが、ベルトは半年前に新品に交換しているため、万が一、ベルト以外の部分が原因だった場合、ベルトを交換しても異音が再発してしまうので原因を調べてほしいとのことであった。

なお、オルタネータ駆動用ベルトを外しても、異音は止まらないらしい。

現象を確認すると、アイドリング中に異音がでているが、エンジン回転を上げると音が出なくなるように感じた。

また、Dレンジ停車時は音が大きくなり、その状態でエアコンコンプレッサをONすると更に音が大きくなるという状況。

この車の補機ベルトは全部で3本あり、オルタネータ駆動用ベルトが2本掛けで、エアコンコンプレッサ駆動ベルトが1本掛けというタイプ。

Dレンジ停車中にエアコンをONし、音が大きい時に異音を確認すると、どうもクランクプーリー付近から異音が発生しているように感じられた。

そこでまずは、クランクプーリーの3本のベルト溝に鳴き止めスプレーを塗布してみたが異音は止まらなかった。

次にクランクプーリー全体にCRCを塗布してみたところ、明らかに異音が小さくなった。

もしやと思い、クランクプーリーにチョークで印を付けてエンジンを始動し、異音が発生した後に印を確認すると、見事に印がズレていた。(写真@、写真A)

この車のクランクプーリーには、クランクシャフトのねじり振動を吸収するためにトーショナルダンパが使用されている。(図参照)

このダンパが切れてしまうと、回転部分のトルク変動により、プーリーの内側と外側が滑ってしまう。

クランクプーリーにCRCを塗布すると異音が小さくなったのは、滑る部分が潤滑されたためであった。

クランクプーリーにつけた合いマークがズレていることから、トーショナルダンパが切れていることは間違いない。

よって、クランクプーリーを交換するように伝え、相談を終えた。

クランクプーリーにこのような機構がついている車があることを知らない場合、異音の発生源に気が付かない。

もし本誌を見て、「初めて知った」というメカニックがいたら、今後の為に是非参考にして欲しい。

《技術相談窓口》

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