エアコンスイッチをONにしてもラジエータファンが回らないという平成19年式クロスロード(車両型式RT1、エンジン型式R18A)のトラブル事例を紹介する。
症状を確認すると、エアコンONでコンデンサーファンは回っているがラジエータファンは回っていなかった。
この車のファンの制御がどうなっているのかと思い調べてみた。すると次のことが分かった。
ファン系のリレーはラジエータファンリレー、コンデンサーファンリレー、ファンコントロールリレーの3つがあり、それぞれをエンジンECUが制御していた。
ある温度になるとECUがFAN LO端子をONさせてラジエータファンリレーをONさせる。
すると、ラジエータファンとコンデンサーファンが直列回路となり、それぞれが低速で回る。(図1)
A/C ON又は高温時ではECUのFAN LO端子に追加してFAN HI端子もONさせて、コンデンサーファンリレーをONさせると同時にファンコントロールリレーもONさせる。(3つのリレーをONさせる。)
すると、ラジエータファンとコンデンサーファンは並列回路となり、それぞれが高速で回転するようになっていた。(図2)
ということは、ラジエータファンとコンデンサーファンは、低速、高速の違いはあるが回転するときは常に同時に回るはずである。
よって、今回のようにコンデンサーファンのみが回ることはあり得ない。
A/C ON状態では、3つのリレーは全てONしているはずなので、その状態でリレーを1個ずつ外してみた。
すると、ラジエータファンリレーがONしていなかったことがわかった。
ラジエータファンリレーがONしなければ、当然、ラジエータファンは回らない。
そこで、ラジエータファンリレー回路を詳しく調べてみたが、リレーや配線に異常は見つからなかった。
ということは、ECUが不良で、FAN LO端子をONさせていないということになる。
念のため、ECU部でFAN LO端子だけを強制的にONさせてみると、2つのファンは低速で回り、プラスしてFAN HIもONさせると、それぞれ高速で回った。
このことからも、ファン回路はECUを除けば全て正常ということになる。
また、ラジエータ用水温センサーにダミーの抵抗を入れ、データモニタでファンコントロールLOとファンコントロールHIの状態を確認すると、95℃相当の抵抗を入れた場合、LOだけがONになったが、実際にはラジエータファンリレーはOFFのままであり、2つのファンは回らなかった。(図3)
続いて、109℃相当の抵抗を入れると、ファンコントロールのLOもHIもONとなったが、ラジエータファンは回らずに、コンデンサーファンだけが高速で回っただけだった。(図4)
ECU自体も温度によって正しく制御をしようとはしているが、ECU内にあるリレーをさせONさせる回路の不良により、リレーがONしていなかったようである。
ECUを注文し交換すると、温度によって低速、高速でそれぞれのファンが回るようになった。
めったに点検しない車で、ECUとしては珍しい壊れ方だったが、さすがに点検結果からは100%ECU不良と判断できたので安心して交換することができた。
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