暖機後、アイドル不調になるという平成12年式アコード(車両型式LA-CF6、エンジン型式F23A)のトラブル事例を紹介する。
エンジン不調ということなのでパワーバランステストを行ったが、特定のシリンダの失火ではなかった。
また、失火度合いも完全な失火というよりも軽い失火と感じ、エンジン回転を少し上げると、失火はほとんどわからなかった。
スキャンツールでデータを確認すると、インマニ圧力は、アイドル時、−380mmHgと、正常な状態にくらべると、明らかに不足していた。
この不足のインマニ負圧のせいか、空燃比が濃い状態になっており、空燃比の補正値と学習値は、アイドル時、トータルで−43%とかなり減量していた。
では、このことからインマニ負圧を検出している圧力センサーの不良かというと、そうとは限らない。
確かに、圧力センサーが不良であれば、空燃比は濃くなりエンジン不調となる可能性はある。
しかし、圧力センサー以外の要因でエンジン不調になれば、インマニ負圧は不足し、濃くなることも考えられる。
卵か先かニワトリが先かの理論になるのだが、どちらが先かを確認する方法がある。
どうするかというと、圧力センサーにマイティバック等で正常な状態のインマニ負圧(−500mmHg)をかけ、スキャンツールのデータモニターで、インマニ負圧がほぼ−500mmHgになっているかを確認するのである。
数値が違えば圧力センサーの不良である。
また、エンジン回転を上げてみるのも一つの手である。
この車の場合、エンジン回転を1,500回転に上げてみると、インマニ負圧は−520mmHgになり、空燃比の補正値は−10%前後となった。
このことから圧力センサーは正常と判断した。
エンジンの3要素は、良い火花、良い燃料、よい圧縮と言われているが、良い火花である点火系は、完全な失火ではないので原因としては除外してもよさそうである。
となると原因は燃料系(濃いか薄いか、もしくは燃料自体の不良)、エンジン本体(圧縮圧力、バルブタイミング、バルブクリアランス)に原因がありそうである。
燃料系に原因があれば、排気ガスに異常値があるかもしれないと思い測定すると、COは0.8%でHCが120ppmだった。
この数値は微妙な数値である。
濃すぎで失火であれば、CO、HC共にもっと出るはずである。
逆に薄すぎで失火であれば、COはほぼ0%のはず。それがどちらも中途半端な数値なのである。
このように中途半端な場合、過去の経験から原因としては、燃料自体の不良、バルブタイミングの狂い、バルブクリアランスの過小、VVTの誤進角、EGRの誤作動が考えられる。
ただ、ストール回転は点検しており、2,400回転ほどあったのでバルブタイミングの可能性は低く点検は後回しにすることにした。
また、特定のシリンダのミスでもないようなのでバルブクリアランスの点検も後回しにした。
燃料に関しては、ユーザーさんに確認してもらったところ、この車はずっと乗り続けており、GS以外で燃料を入れていないという。よって、燃料の不良も考えにくい。
となると、残る可能性はEGR、またはVVTの誤作動ということになるので、EGRバルブを外してみた。
すると、本来、全閉していなければいけないはずのバルブが、2mmほど浮き上がっていた。
当然、アイドル時にEGRが起こっていたことになる。本来、アイドル時にはEGRはしていないはずである。
バルブを手で押しても戻らないくらいの固さで固着していた。プラスチックハンマーでたたくと全閉した。
バルブの位置は全閉状態になったが、密着不良も考えられるので、念のため、EGR通路に銅版を入れ、完全にEGRしない状態でエンジンをかけてみた。
すると、アイドル不調はなくなり正常になったのである。
EGRバルブを交換し、データモニターを確認すると、空燃比の補正値は+5%前後、インマニ負圧は−540mmHg、COが0.01%、HCが50ppmと全て正常となった。
従来、ガソリンエンジンの3要素と言われていたが、近年では排気ガス装置を含めた4要素が正常でなければいけないようである。
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