アイドル不調という平成18年式カローラ(車両型式NZE121、エンジン型式1NZ)のトラブル事例を紹介する。
エンジンをかけると確かにミスをしている。
ダイアグノーシスを点検すると、コードP1300、P1305、P1310、P1315を記憶しており、各シリンダの「プラグくすぶり」というコード表示だった。(写真1)
この「プラグくすぶり」についてマニュアルで調べてみると、本当にプラグがくすぶっていることを表しているわけではなく、ECUからダイレクトIGコイル内のイグナイターに出力した点火指示信号に対して、火花が飛んだという点火確認
信号がECUに入力されなかった時に表示するコードとなっていた。
つまり、ECUの指示に対してIGコイルから火花が飛ばなかったことを表しているのであって、本当にプラグがくすぶっているわけではない。
症状からも、特定のシリンダのミスではなく全体的に不規則なミス気味という感じであった。
依頼者にエンジン回転中、もしくはクランキング時にIGコイルのコネクタを外したかと聞くと、外したという答えが
返ってきた。この時に異常コードを記憶したようである。
症状としては不規則な軽いミス。そして、回転を徐々に上げると、1,200回転を超えるくらいからはミスは感じなかっ
た。
また、レーシングでの吹き上がりも問題なかった。
これらから予想されるのは、VVTの誤進角、EGRの誤作動、あとは空燃比のズレやバルタイのズレである。
これらを確認するために、空燃比補正値、VVT進角度、水温、EGRステップ数、EGR温度をデータモニタで点検した。
空燃比はフィードバックを行っており問題なかった。
また、VVTの目標進角度0度に対して、実進角度もほぼ0度であり問題なかった。
おかしな数字だったのは、水温が94℃にも関わらずEGR温度が131℃だったことである。(写真2)
通常、ガソリン車はアイドル時にEGRはしていない。
よって、EGRが作動していないときのEGR温度(EGRバルブ部の温度)は、シリンダヘッド温度より若干低いのが一
般的である。
それが、この車はEGRステップ数が0(非作動)にも関わらずEGR温度が131℃と、水温(94℃)よりかなり高かっ
たのである。
これはどういうことかというと、EGRバルブが機械的に開いていて、高温の排気ガスが流れ込んでいるということである。
もしそうであれば、当然エンジン不調になる。
そこでEGRバルブを外してみると、スラッジで通路やバルブのカサの部分がかなり汚れていた。(写真3)
キャブクリーナで清掃して組み付けてみると、アイドリングは正常になった。
データを再度調べると、水温80℃に対して、EGR温度は70℃になっていた。(写真4)
アイドル不調の原因は、スラッジによるEGRバルブの閉じ不良であった。
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