発進時に車体の振動が酷いという、平成18年式ジムニー(車両型式ABA-JB23W、エンジン型式K6Aターボ)のトラブル事例を紹介する。
ユーザーは約5年前に車を購入し、その約2年後に変速不良でA/Tをリビルト品に交換している。
その3〜4ヶ月後に発進時に振動が大きいという症状が発生し始め、ATFの量が非常に少なかったことからバルブボデーASSYを交換したが、改善が見られなかった。
ここで再度A/Tを別のリビルト品に交換して納車。
1年ほどは順調に走行していたのだが、再び同じ不具合が発生。もう一度A/Tを3回目のリビルト品に交換したのだが、約半年後に再発し現在に至る。
全部で3回A/Tを交換しているのだが、3つのA/Tが同じように壊れるものだろうかという相談。
A/Tのコントロールユニット(以下、C/U)及びトランスファは不具合が発生し始めてから途中で交換しているため、原因とは考えにくいとのこと。
現象を確認してみると、Dレンジ停止状態で少しアクセルを踏んだ際に、タイヤは止まっているにも関わらずプロペラシャフトが正転及び逆転(反力で反対に回ろうとしている)を繰り返し、大きな異音と共に振動を発生させていた。
A/Tの制御で振動とリンクしているものがないか点検してみたところ、シフトソレノイド1(以下、S1)の信号と不具合の振動がリンクしていることが判明した。(図1参照)
C/Uは交換しているため、まずはC/U側のコネクタを切り離し、S1〜ボディアース間の抵抗を測定した結果、6〜14Ωで変化していた。
念の為、シフトソレノイド2(以下、S2)の抵抗も測定してみたが、14Ωで安定していた。
この抵抗の変化が不具合の原因なのかを特定するために、C/U側のカプラでS1端子とS2端子を入れ替えてみたところ、今度はS2の信号が振動とリンクするようになった。
やはり、S1の抵抗値の変化が不具合に関係している。
C/U側のコネクタを切り離した状態でA/T側のコネクタも切り離し、ワイヤハーネス側のS1端子〜ボディアース間で抵抗を調べると15kΩであった。(S2端子〜ボディアース間は∞Ω)
配線のショートが原因と考えて調べていくと、スロットルワイヤとワイヤハーネスがショートしている部分を発見した。(写真参照)
アクセルペダルを踏むとスロットルワイヤケーブルが動くため、少しアクセルを踏んだ状態がちょうど完全にショートする位置関係になっていたのだろう。
A/Tを交換すると一時的に症状が治まっていたのは、部品を脱着することでスロットルケーブルとワイヤハーネスの位置関係が変化し、走行を重ねることによって振動等の影響で再びショートする位置関係に戻っていたと考えられる。
S1とS2の変速制御は図2のようになっている。
本来S1とS2が両方ONで1速発進するのだが、ショートによる影響でS1がON/OFFを繰り返すことにより、発進時に1速と4速で瞬間的に何度も変化していたと考えられる。
プロペラシャフトに掛かるトルクは、1速は大きいが4速は小さい。
このトルクの変動がプロペラシャフトを暴れさせた原因ではないかと考えられる。
ショート箇所を修復して不具合は完治したのだが、思いもよらない現象につながったショートのトラブルであった。
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