ブレーキ警告灯が点灯しっぱなしという平成19年式MRワゴン(MF22S、K6A)のトラブル事例を紹介する。
ただし、どういうわけかRレンジにすると消灯するという。
通常、このブレーキ警告灯はパーキングブレーキスイッチ、もしくはマスターシリンダのブレーキフルードレベルSWにより点灯するようになっている。
ただし、最近の車のようにABSやブレーキ関係のシステム(衝突被害軽減ブレーキ、電動パーキングブレーキ等)が搭載されている場合は、それらのECUでも点灯させることがある。
まずは簡単に点検できる、前述の2つのスイッチのコネクタを外してみた。
しかし、それでも点灯したままである。
外したコネクタの端子電圧を点検すると、0.8VとどちらかのスイッチがONしていると思われる電圧だった。
ただし、コネクタは外しており、実際にスイッチがONしているのではなく、この2つのスイッチ回路の配線のどちらかがアースとショート気味か、もしくはメータの不良ということになる。
しかし、Rレンジにすると必ず警告灯が消灯することから、単純に配線がショートしている可能性は低いと思えた。
それは、先ほどの外したコネクタの端子電圧を測定した時に、0.8Vで警告灯は点灯していたのだが、Rレンジにすると約11Vになり、警告灯が消灯したことからも、配線のショートではないという事が言えた。
こうなるとメータ不良の可能性が高いが、実は、この車は依頼者の工場で点検を行っており、メータを交換して数日はよかったそうである。
結局、メータは2個交換したのだが、良くなっていないという。
ということで、本格的に点検を開始することにした。
まずはこの車のシステムがどうなっているのかを確認するために配線図を調べると、パーキングブレーキスイッチとブレーキフルードレベルSWの信号は、メータに入力されていたが、ランプ(LED)に直接つながっているのではなく、メータ内のCPUにつながっており、CPUが警告灯を制御していた。(図1)
また、シフト位置の信号はエンジン&A/T&A/CのECMに入力されており、ECMからCAN通信線を使いメータのCPUへ入力されていることがわかった。(図2)
ただ、CAN通信線の信号の良否については点検することは出来ない。
どうしたものかと悩みながら配線図を見直していると、Rレンジの信号が、ECMとは別につながっていることに気が付いた。
バックアップランプ回路の配線図を調べると、その配線はE324コネクタにつながっており、このE324コネクタはBCM部に差し込まれていることが分かった。(図3)
また、図1の配線図を調べると、E323コネクタがJ/Bにつながっていた。
E324もJ/Bにつながっていたので、J/B部のコネクタを調べると、隣同士になっていることが判明。(図4)
このJ/Bは運転席足元のヒューズBOX部にあり、BCMも取り付けられていた。
とりあえずBCM部で点検しようと、BCMがあるヒューズBOX&J/B&BCM部(写真1)を触っていると、警告灯が点灯したり消灯したりと症状に変化が現れた。
この部分を外して分解してみると何かの液漏れの形跡があった。(写真2)
液体は緑っぽいがLLCではなく、また、錆によるものでもなかった。
臭いを嗅いだ限りでは芳香剤のような気がしたが断定できなかった。
中古だが、ヒューズBOX&J/B&BCMを交換すると、警告灯は正常に点灯・消灯するようになった。
それにしても、なぜ、Rレンジにすると消灯したのであろうか?
あくまでも推定であるが、Rレンジの信号線とブレーキフルードレベルSW信号線が短絡したことにより、メータのブレーキフルードレベルSW信号線はバックアップランプ経由でアースされ、SW自体はOFFなのに0.8VとSWがON状態の電圧になって、ブレーキ警告灯が点灯。
しかし、Rレンジにすると、Rレンジの信号電圧がメータにかかり約11Vとなった。
これは、ブレーキフルードレベルSWがOFFの状態の信号なので、ブレーキ警告灯が消灯したのかもしれない。
後日、依頼者と話す機会があったのだが、この車は中古車屋さんからの依頼だったそうで原因を説明すると、液体の芳香剤の入れ物が倒れて中の液体がこぼれていたことがあったということである。
コーヒーをこぼしたことによるトラブルはあったが、芳香剤は初めての経験である。
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