エンジン警告灯が点灯しエンジン不調になることがあるという平成16年式ムラーノ(車両型式PNZ50、エンジン型式VQ35)のトラブル事例を紹介する。
ダイアグノーシスを調べると、P0132(O2センサー B1S1電圧高い)とP0152(O2センサー B2S1電圧高い)を表示。
このエンジンはV型エンジンであり、それぞれのバンクにフロントO2センサーとリヤO2センサーの合計4つのO2センサーが取り付けられている。
データモニタでそれぞれのO2センサー電圧を調べると、冷機時は問題ないが暖気が進むと徐々に電圧が大きくなり、暖気後には4つのO2センサー(右バンクと左バンクのそれぞれのフロント及びリヤ)のうち3つが2.5Vで、バンク2(左バンク)のリヤO2センサーは2.24Vになった。(写真1)
これは明らかにおかしい。
排気ガス中の残存酸素濃度を測定するセンサーは、全域においての空燃比を検出する空燃比センサー(LAFセンサー)と、理論空燃比を基準に濃いか薄いかを検出するO2センサーの2つのタイプがある。
空燃比センサーであれば、0〜5V間で変化するが、このエンジンは全てがO2センサーであり0〜1Vの間でしか電圧は変化しないはず。
本当にこんなに高い電圧になっているのかを確認するために、実際にO2センサー部で電圧を測定してみた。
すると、B2S1(左バンクのフロント側)のO2センサーは、信号端子には約9Vが、アース端子には約8Vの電圧が出ていた。
スキャンツールでは2.5Vと表示されていたのだが、実際はもっと高かったのである。
この高い電圧のせいで異常コードの検出と、減量補正が働いたためにエンジン不調になったようだ。
この事実と、データモニタで多くのO2センサーが2.5Vを表示していることから、たぶん、スキャンツールでは2.5V以上は表示しないのではないかと推測される。
アース端子にも電圧が出ているのでアース不良かとも思ったが、仮にアース不良でも8.5Vなんていう電圧が出るわけはない。
念のため、アース端子をアースしてみると、アース線はほぼ0Vになったが、どういう訳か信号端子も0Vになったのである。その状態でスキャンツールで全てのO2センサーを確認すると、B1S1の信号だけは1.45Vで他は0Vになっていた。(写真2)
なぜこんな電圧になるのかはわからなかったが、多分、どこかのO2センサーの信号とO2センサーヒーターの電源との短絡だろうと思い、順番にO2センサーのコネクタを抜いていった。
すると、B1S1のコネクタを抜くと、他のO2センサーの電圧は1V以下と正常な値になった。
原因はB1S1のO2センサー内でのショートだったようである。
B1S1のO2センサーを交換すると、全てのO2センサーの信号は正常になった。
よくはなったが、いろいろと疑問が残った事例である。
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