左右のスライドドアが時々動かなくなったり、走行中にカーナビが勝手に再起動することがある。また、エンストはしないがアイドリングが不安定になることもあるという、平成29年式スバル・ジャスティ(車両型式DBA-M900F、エンジン型式1KR-VET)の事例を紹介する。
詳しく話を聞いてみると、不具合時にはコンビネーションメータ内のディスプレイ部に「バッテリ電圧低下」と表示されることもあるという。
車を預かっている間、ステアリングホイールを操作している際に、カーナビの不具合が一度だけ再現したが、それ以降は再現しない。
バッテリは約1カ月前に交換したばかりなので、バッテリの不良は考えにくい。また、念の為バッテリを点検したが、判定は良好であったとのこと。
当会に入庫した車を車庫に移動させる際に、テールランプの灯かりがチカチカしていることが気になった。
また、室内灯においてもチカチカしていることが確認できた。
チカチカという現象を説明するのは難しいのだが、例えるならば、蛍光管タイプの蛍光灯が寿命を迎える時に光源が安定せずにチカチカしている感じである。
テールランプは純正のLEDランプであるため、本来であればチカチカするはずがない。
また、ランプ類がチカチカしている状況で電動パワステを操作すると、チカチカしているランプ類が瞬間的に非常に暗くなることがあった。
今回の不具合は、その現象から電源もしくはアース関係のトラブルと考えられたため、ランプ類の不具合がユーザーの訴える不具合と関連があると判断。
なお、この不具合はエンジンがかかっている時のみ発生し、エンジンが停止している時には何故か発生しなかった。
まずは不具合が発生している状態でテールランプの電源及びアースをオシロスコープで測定したところ、電源にノイズが発生していることが分かった。(写真@)
バッテリのプラスターミナル部ではノイズは発生していない(写真A)ことから、不具合は回路の途中で発生していると考えられた。
そこで、このノイズの発生源をたどるために、テールランプ部から電源を遡り、各部で波形を観測していったところ、エンジンルーム内のヒューズBOXの入口で既にノイズが発生していることが判明した。(写真B)
しかし、バッテリのプラスターミナルからヒューズBOXまでは、長さ30cm程の太い配線があるだけである。
配線以外何もないのにノイズが発生するものだろうかと考えながら、何気なくバッテリプラスターミナルのカバーに触れたところ、ノイズがなくなってしまった。
プラスターミナルのカバーから手を離すと再びノイズが発生する。
プラスターミナルのカシメ部分にはガタ等は全くない。(写真C)
頭の中に?マークが浮かぶが、今起きていることが現実である。
狭いすき間に頭を入れ込み、バッテリのプラスターミナルのカバーに手を触れた際に配線に変化がないか確認したところ、原因が判明した。
写真D−(1)及び(2)に示すネジの頭が本来の位置関係で取り付けられておらず、むりやりナットを締め付けていたために、ターミナル自体は固定されているものの、矢印の配線は固定されていなかったようである。
このため、エンジンの振動で配線の当たり方が変化し、ノイズを発生させていたものと考えられた。
本来の位置関係で取り付けなおしたところ、ノイズはなくなり、各種ランプもチカチカしなくなった。
ユーザーの訴える不具合は再現できなかったが、これで完治したものと判断し納車。
後日確認を取ってみたが、不具合は再発していないようだった。
結局は1カ月前のバッテリ交換が原因であったわけだが、普段バッテリ交換を行う際に、慎重に交換作業を行う人は少ないと思う。
慣れた作業であるがゆえに、流れ作業で作業を進めてしまう。
しかし、落とし穴はそういったところに潜んでいるものだ。
今一度、気持ちを引き締めて作業をせねばならないと感じた一件であった。
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