走行中にエンストして、その後はクランキングしても初爆が無く、エンジンがかからなくなったという平成20年式のエブリー(車両型式DA64W、エンジン型式K6A)のトラブル事例を紹介する。
エンスト後は全くエンジンがかからないためレッカーにて搬入してきた。
IGN-ONにしたがエンジンチェックランプが点灯せず、スキャンツールを接続してもエンジンコントロールユニット(以下ECM)と通信が出来ない。
これはECMがONになっていない(電源不良、アース不良、本体不良)証拠である。
IGN-ONにした時に、ECMの電源となっているメインリレーの作動音はしていない。
リレーの単体点検をしたところ、リレーは正常だった。
メインリレーを外した状態でメインリレーの電源側の電圧を測定すると0Vだった。
その上流はリレーボックス内の15AのFIというヒューズがあり、そのヒューズを点検すると断線していた。
この状態で新しいヒューズを入れても断線すると思われるので、ヒューズの代わりに12V−21Wの電球を入れてみた。
もし短絡していれば電球が明るく光るはずである。
IGN-ONにすると予想通り電球が明るく光ったので、この回路が短絡しているということになる。
つまり、この状態でコネクタを外したり、配線を揺すった時に電球が暗くなればその触った箇所が短絡していると特定できる。
回路図を見ながら今回断線していたヒューズの下流にあるコネクタを外していくと、2番のインジェクタのコネクタを外した時に電球が暗くなった。
2番のインジェクタのコイル短絡を疑い抵抗を測定すると12Ωで正常だった。(基準値12±0.3Ω)
しかし2番のインジェクタのコネクタを取り付けるとまた電球が明るく光った。
インジェクタ自体は短絡していないのに何故か…?
インジェクタのコネクタの脱着を何度を繰り返していると、コネクタを付けた時にタペットカバー後方から来ているインジェクタのハーネスが少し引っ張り気味であることに気付いた。
2番インジェクタのコネクタからハーネスをたどっていくと、タペットカバーの一番後ろでインジェクタハーネスのコルゲートチューブが破れており、2番のインジェクタハーネスがタペットカバーの取付ボルトに干渉し、被覆が破れて短絡していることが分かった。《写真》
被覆が破れた箇所を絶縁テープで保護して、2番のインジェクタのコネクタを取り付けてもタペットカバーのボルトと干渉しないように配線の取り回しを少し修正した。
その後、電球を外して新しいヒューズを入れてエンジンが正常にかかること、インジェクタの配線を揺すっても問題ないことを確認した。
正しい配線の取り回しは同型車と比較しないと分からないが、コルゲートチューブが破れてしまった上、何らかの作業時に配線の取り回しが厳しくなったことが原因で今回の現象になったと思われる。
《技術相談窓口》
|