メータが作動不良を起こした時にエアコンも冷えなくなるという平成25年式フィット(車両型式DBA-GE6、エンジン型式L13A、走行距離6万km)のトラブル事例を紹介する。
何ヵ月か前から時々発生していたそうで、エンジンをかけ直したりすると良くなっていたが、ついに全く現象が改善しなくなったとのこと。
当会に車を持ち込んできた時も症状が発生した状態だった。
エンジンの調子は異常が無く、走行も問題ないが、タコメータが約1,500rpm、スピードメータが約30km/hで止まっている。
メータ内にABS警告灯、ブレーキ警告灯、パワステ警告灯が点灯しているが、パワステは正常に機能している。
一旦エンジンを止めてからIG-ONにしてもメータ表示は全てエンジンをかけた時と同じである。
この症状が出ている時はエアコンにも不具合が発生する。
この車のエアコンはオートエアコンだが、風量の切り替え、吹き出し口の切り替え、温度の切り替えは正常に作動する。
ただA/CスイッチをONにしてもコンプレッサがONせず冷たい風が出ない。
水温がラジエータファンの作動温度まで上がればラジエータファンは回るが、作動温度以下の時はA/CスイッチをONにしても回らない。
スキャンツールで全自己診断をすると、エンジンはU0155:F-CAN通信異常・コンビネーションメータコントローラ通信不良、を表示。
エアコンはB1205、B1206、B1207、B1011(それぞれコンビネーションメータとの通信不良を示す)を表示している。
また、コンビネーションメータとの通信はできなかった。
警告灯が点灯しているABSとEPSの自己診断は異常無しだった。
この自己診断内容からするとコンビネーションメータの不良が考えられる。
全自己診断をした時にコンビネーションメータが検出されていなかったので辻褄も合う。
それならコンビネーションメータを交換すれば直る…と思ったが、コンプレッサがONしない原因がコンビネーションメータなのか?
症状が発生する時はメータとエアコンの両方が同時に発生し、改善するタイミングも同時であることから関連があるのは間違いない。
ただコンビネーションメータがどのようにエアコンのコンプレッサ制御に関与するのかをFAINESで調べてみた。
すると制御系ブロック図に示す通り、A/Cスイッチの信号、A/C制御信号、A/Cプレッシャスイッチの信号は、B-CANコントローラまたはMICUを経由してB-CAN信号としてコンビネーションメータに送信、そこからF-CAN信号でPGM-FIに送信、PGM-FIがA/Cコンプレッサリレーを制御していることが分かった。
つまりオートA/CコントロールユニットがコンプレッサのON信号を出してもコンビネーションメータが通信不良を起こしていればPGM-FIまで信号が届かないことになる。
この制御からすると、コンビネーションメータ不良とエアコン不具合の関連が考えられることが分かった。
ABSとEPSの警告灯が点いているのに自己診断を検出しないのもコンビネーションメータ不良と思われる。
コンビネーションメータの電源、アースを点検したが異常は無かった。
オートA/CコントロールユニットやMICUからのCAN通信線の配線不良も考えられるので、MICUとコンビネーションメータのCAN通信線の点検をしたが異常は無かった。
念のためにMICUとコンビネーションメータのそれぞれのCAN信号線をオシロスコープで計測したところ同じ波形が出たのでコンビネーションメータ本体不良と判断した。
依頼があった工場からコンビネーションメータが届いたので交換したところ正常となった。
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