CVT警告灯とABS警告灯が高速で点滅するという平成26年式ミラココア(車両型式DBA-L675S、エンジン型式KF)のトラブル事例を紹介する。
元々はエンジンがかからないということで入庫したようで、ダイアグノーシスを点検するとP1604(始動不良)を記憶していたとのことだった。
トラブルコードの消去やデータモニタ、アクティブテスト等を行っているうちに、エンジンは始動できたのだが、始動後、CVT警告灯とABS警告灯が高速で点滅するようになったようだ。
当会で、まずはABSのダイアグノーシスを調べると、C1281(マスタ圧センサ未取得)とC1336(Gセンサ0点未取得)の2つのトラブルコードを表示した。
未取得とはどういうことかと、ABSの2つのコードの異常検出条件を調べるために、ファイネスでDTCコードを調べたがC1281もC1336も一覧表には無かった。
モデルチェンジ時に追加になっている可能性があるので、このL675Sの全ての改訂版の修理書を調べたがやはり載っていなかった。
次に、CVTのダイアグノーシスを調べると正常コードだった。
ABSはコード表に無いDTCを表示しているし、CVTは警告灯が点滅しているにも関わらず正常コードを表示している。
どちらもECU不良の可能性があるが、そもそもエンジン始動不能で入庫した車両である。たまたま2つのECUが壊れたとは考えにくい。
何かが壊れたのではなく、何かのモードになっているのかもしれないと感じた。
というのも、ずいぶん前の話になるが、ダイハツ車でISCVが無いタイプのEF-SEエンジンで、アイドル回転の学習を行う作業があったのだが、その作業をISCV付きのエンジンで行うと、メーカーの工場出荷モードになりエンジン警告灯が高速点滅するというトラブルを経験したことがある。
今回の車両も異常な速さの点滅である。もしかすると、なんらかのモードになっているのかもしれないと思い、デーラーの人に相談してみた。
すると、この車には工場出荷モードなるものはないとのことだった。
それと、修理書に無いトラブルコードの件も相談すると、調べていただいた結果、確かにコード表にはないとのことだった。
しかし、もしかしてということで更に調べてもらうと、テストモードでのコード一覧に2つのトラブルコードが載っているとがわかった。(表1)
すっかり失念していた。
トヨタとダイハツ車の一部のシステムのダイアグノーシスには、ノーマルモードとテストモードがあるのである。
通常行うダイアグノーシスはノーマルモードなのだが、テストモードにすると、ノーマルモードより高い検出レベルのダイアグノーシスになるのである。
テストモードに移行すると、警告灯は高速点滅になり、全てのテストモードコードが自動的に記憶される。
そして、エンジンをかけ走行したりして正常なデータが入力されると、その項目のコードは消去されていくのである。
消去されなかったコード内容は異常が継続しているということになる。
スキャンツールを使い、ダイアグノーシスをノーマルモードに変更すると、ABSランプの警告灯は消えコードも正常となった。
しかし、CVT警告灯は依然高速点滅を行っていた。
CVTにはテストモードがないので、どうしたものかと思ったが、作業サポートに何かないかと思い調べると、「ECU初期学習」という項目があったので試してみたところ、CVT警告灯も消えた。
依頼者にテストモードにしたのかと確認すると、意識して行った覚えはないが、テストモードというような文字に記憶があるという。
行わなくても良い作業を行ったせいで、余分な時間を取ったものである。
なお、そもそものエンジン始動不能については、はっきりした原因は分からずじまいだったが、このエンジンは使用状況によってはプラグがかぶりやすかったと記憶している。
その対策としてプラグの熱価が変更になっている。
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