スピードメータが動かなかったり、ATが変速しなかったりするという平成18年式ラッシュ(車両型式CBA-J210E、エンジン型式3SZ、走行距離19万q)のトラブル事例を紹介する。
他の症状としては、メータ内のO/D-OFF(オーバドライブオフ)の黄色いランプが約1秒周期で点滅したり、シフトレバーをDレンジやRレンジに入れた時のショック(セレクトショック)が大きいとのこと。
自己診断でP0720アウトプット回転入力無し、P0725エンジン回転入力無し、P0500車速信号系統の3つが出ていたので、トランスミッションに付いている車速センサ、タービン回転センサを交換したが変化が無く、自己診断の内容も変わらないので見てほしいとのことで当会に入庫。
実際に走行してみると申告通りの症状の時もあれば、変速はするが変速点が高いという症状の時もあった。
スキャンツールをつなげると、トランスミッションコントロールコンピュータ(以下、TCM)の自己診断やデータモニタが見られる時と、通信エラーになり見られない時もあった。
TCMのデータモニタが見られる時に数値を観察すると「バッテリ電圧」という項目が10V〜12.2Vあたりを頻繁に上下していた。
TCMの電源端子をテスタで測定すると+B、BAT1、BAT2(回路図参照)は12.4Vで安定しているが、アース端子のE1、E01、E02は約0.3Vの電圧が残っていた。
アース端子は0Vでないとおかしい。
TCMのアース不良を疑い、TCMのアース端子E1からバッテリのマイナスターミナルまでの間を別の配線で直接接続すると、TCMのデータモニタの電圧は12.4Vで安定した。
この状態でシフトレバーを動かすと、セレクトショックは小さくなった。
この結果から、原因はTCMのアース不良により、申告通りの症状が発生していたことが分かった。
しかし、原因は分かったが、その原因箇所を探すのはここからである。
まずはTCMのコネクタを外してE1〜アース間の導通を測ると約3〜4Ωの抵抗があった。
同じくE01、E02〜アース間も同じ抵抗だった。
配線図でこのアースをたどって行くと、エンジン後方部でエンジンにアースされていることが分かった。(エンジンルーム艤装図参照)
エアクリーナー等を外してアース部分を確認すると、このアースボルトはタペットカバーに取り付けられていた。
このアースボルトの状態は、軽く付けただけで締まっておらず、隙間が開いた状態になっており、アース線が浮いていた。(写真参照)
このアースボルトを締めるとE1、E01、E02からアース間の抵抗は0Ωになり、電圧も0Vになった。
また、データモニタの電圧も上下することなく安定し、通信エラーも出なくなり、セレクトショックも無くなった。
この状態で試乗したところ、全ての不具合は改善された。
アースボルトが緩んだ原因だが、よくエンジンルームを見てみると、タペットカバーパッキンがきれいなことに気付いた。
車を持ち込んだ工場に最近の修理内容を聞くと、見事に「つい最近タペットカバーパッキンを交換」との回答。
故障ではなく、ヒューマンエラーだった。
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