エンジンチェックランプが点くことが時々あるが、エンジン不調は全く無いという、平成17年式ハイエース(車両型式CBA-TRH224W、エンジン型式2TR、走行距離21万km)のトラブル事例を紹介する。
エンジンチェックランプが点くタイミングはエンジン始動直後で、そのタイミングで点かなければエンジンを止めるまでずっと点かないとのこと。
発生頻度は低く、点かない時は何日も点かないとのことだった。
現象は1年ぐらい前から発生しているという。
当会に入庫している間は何度エンジンを始動してもエンジンチェックランプが点くことは無かった。
DTC(故障)コードはP0412:二次空気VSV系統(AirOff時)、P0418:二次空気ポンプ系統、P1613二次空気ドライバ系統が残っていた。
この3つのDTCコードの共通点は「二次空気」のシステムに異常を示しているということである。
二次空気システムの役割は、エンジン冷間時は排気ガスの温度が低く三元触媒が効率良く作用しないので、エキゾーストマニホールド内にエアを圧送し、未燃焼ガスを燃焼させて排気ガスの温度を上昇させることにより三元触媒の浄化作用を促進させることである。
最近の車には採用されていることが少ないので馴染みが少ないかもしれないが…。
このように排気ガスの浄化に関する不具合のためエンジンチェックランプが点灯する。
同じように排気ガスに関わるシステムの一つにEGR(排気ガス再循環装置)があるが、二次空気システムはEGRのように吸気側に影響を及ぼさないのでエンジン不調は出ない。
この車は時々しかエンジンチェックランプが点灯しないということだが、《DTC検出条件》に記載されている通り、 構成部品のエアインジェクションコントロールドライバ、エアポンプASSY、エアスイッチングバルブ、エンジンコントロールコンピュータの不具合と、それぞれを接続する回路の断線または短絡となっている。
つまり、前述した部品、または配線に電気的な故障が起きた時にエンジンチェックランプを点灯させる仕組みになっている。
逆に、電気的に問題が無く機械的に故障している時はエンジンチェックランプは点灯しない。
なぜなら二次空気が出ているかどうかを検出するセンサ等が無いからである。
今回検出しているDTCコードはエアインジェクションコントロールドライバが全て関係している。
1年ぐらい前から現象が発生しているとのことだったが、その頃にエアインジェクションコントロールドライバを新品に交換したが直らなかったので元の部品に戻しているという話だった。
ということはエアインジェクションコントロールドライバの本体不良はまず消去できる。
基本的な点検として、エアインジェクションコントロールドライバの電源、アースから点検しようと思い《回路図》のA1、B1の端子をするためにコネクタを外すと、コネクタ内に青サビが出ている部分と黒く焼けているような部分があった。
この2極コネクタの端子はA1(BATT)とA2(VP)であり、エアインジェクションコントロールドライバとエアポンプの電源端子となっている。
このような青サビなどの接触不良があると導通不良を起こしてしまう。
コネクタを外した時に少し焼けたような匂いがしていたので、黒くなっているのは熱を持って焼け気味だったのだろう。
念のために他のコネクタ類を点検したところ、コネクタに異常は無かったが、エアポンプの抵抗を測定すると正常値0.4Ω〜1Ωに対し約1.7KΩあった。
エアスイッチングバルブは正常値4.5〜5.5Ωに対し測定値5.5Ωで正常だった。
以上の点検結果からエアポンプの交換と、エアインジェクションコントロールドライバのメス側端子の修理が必要であること、エアインジェクションコントロールドライバ側のオス端子も状態によっては交換の必要があることを依頼があった工場に内容を伝えて返車をした。
《技術相談窓口》
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