エンジンがかかった時にハンチングしていたが、しばらくするとエンストして、その後はクランキングしなくなったという、平成19年式クラウン(車両型式DBA-GRS182、エンジン型式3GR-FSE、走行距離17万q)のトラブル事例を紹介する。
最初の症状は、ユーザーがエンジンをかけた時に大きくハンチングしていたとのこと。
しばらくハンチングが続いた後エンストして、再始動しようとしたが、エンジンがかかってもすぐにエンストしたり、クランキングしてもエンジンがかからないという症状に変わった。そのままクランキングを何度かしているとクランキングもしなくなった、ということで連絡があり、車を引き取りに行ったとのこと。
現地で現象を確認すると、ユーザーの申し出通りクランキングはするがエンジンがかからず、何度かクランキングをしていると、クランキングもしなくなったとのこと。
クランキング出来る時はIGN-ONの時にエンジンチェックランプが点灯してスキャンツールもつながるが、クランキング出来ない時はメータ内のエンジンチェックランプは点灯せず、ラジエータファンが回り、スキャンツールは通信出来ないとのことだった。
エンジン以外のECUとは通信可能とのこと。
スキャンツールが通信出来る時にエンジンの自己診断をしたが何も残っていないとのこと。
この状態で一旦工場にレッカーで搬入。
このように現象が変わると何から調べれば良いのか戸惑うかもしれないが、明らかなのはIGN-ONでエンジンチェックランプが点灯せず、スキャンツールが通信出来ない状態ということからすると、その時はエンジンのコントロールユニットが正常に立ち上がってないということである。
しばらく時間を空けるとエンジンチェックランプが点灯してクランキングもすることから、ヒューズの断線の可能性は無い。
ECMの電源とアースを確認してもらったところ、エンジンチェックランプの点灯、消灯に関わらず、IG電源とアースは異常なしとのことだった。
こうなるとECM本体不良の可能性が高いように思えるが、このD4エンジンと呼ばれる直噴エンジンにはフューエルプレッシャセンサと呼ばれる高圧側の燃料圧力を計測する部品がセンサ内部でショートを起こし、Vc電源と呼ばれる5V安定化電源が0Vになってしまうと、ECM内のマイコンもOFFになるため、この車と同じような症状になる事例が過去にもあった。
その時は、フューエルプレッシャセンサのコネクタを抜いた状態でクランキングすると、フェールセーフによりエンジンはかからないが、何度クランキングしてもスキャンツールはつながったままで、エンジン警告灯も消えなくなる。
今回も同じようにフューエルプレッシャセンサのコネクタを抜いて試してもらったところ、何度クランキングしてもエンジンチェックランプは消えることなく、スキャンツールもつながったままとのことだったので、フューエルプレッシャセンサの不良と判断した。
実は実践整備事例の2020年3月号でも同じ内容を一度掲載しているのだが、1か月の間に車種は違えど同じ症状の問い合わせが3件あったので、再度掲載させていただいた。
ちなみに他の車種は、レクサスのGS250、型式はGRS191、平成21年式、エンジンは2GR-FSE。
もう一つの車種はヴォクシー、型式はAZR60G、平成19年式、エンジンは1AZ-FSE。
D−4エンジン搭載車が全て同じ現象に当てはまるかは定かではないが、近い年式のD−4エンジン搭載車なら、このような症状が出た時は最初にフューエルプレッシャセンサ不良を疑っても良いかもしれない。
もしフューエルプレッシャセンサ不良だった時は単体部品の供給は無く、燃料配管のデリバリパイプASSYの交換となる。
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