走行中、3速と4速が頻繁に切り替わるという平成13年式ジムニー(車両型式JB23W、エンジン型式K6A)のトラブル事例を紹介する。
元々はATFを交換(整備工場ではないお店)したら、滑りが発生したということで依頼者の工場でリビルトミッションに交換。
その後、冷機時は問題ないが、暖機後、この症状が出るようになったというのである。リビルトミッションの不良かもしれないということで、リビルトメーカーにお願いし、再度交換したが変わらないということで、今回の依頼となった。
なお、ミッション付属の2つの回転センサ(車速センサとタービン軸回転センサ)は、新品に交換済みである。
試乗して症状を確認すると、約55km/hで一定走行すると、シフト位置が頻繁に切り替わる現象が発生した。
感覚的には3速と4速で切り替わっているようだったので、それを確認するためにオーバードライブスイッチをOFFにした。
すると、シフト位置が切り替わる現象は無くなった。
やはり3速と4速で切り替わっていたようである。
通常、4速ATの場合、冷機時には4速にはならないように制御しているメーカーが多いと思われるが、依頼者が言っていた、「冷機時は不具合がでない」というのも、これで納得である。
オートマチックトランスミッションには、機械式AT、電子制御式AT、CVTとあるが、どのATもシフト位置(変速比)は、基本、車速とアクセルペダルの踏み込み具合によって決定される。
基本は、車速が上がれば、シフトアップ方向に制御する。アクセルペダルの踏み込み量が大きくなればシフトダウン方向に制御する。実際には、その時の車速とアクセル開度で何速にするか決定される。
今回のATは電子制御式4速ATで、アクセルワイヤがあるメカニカルスロットルバルブなので、車速は車速センサ、アクセルペダルの踏み込み具合はスロットルセンサで検出している。
よって、スキャンツールのデータモニタ機能で車速とスロットル開度をモニタしながら走行してみた。
徐々にアクセルペダルを踏んでいくと、車速が50km/h、スロットル開度20%くらいの時に、スロットル開度がいきなり40%から70%くらいの間で、表示が変化をはじめ、それに伴いシフト位置は3速⇔4速と頻繁に切り替わり始めた。
次に、データモニタをグラフ表示にして、スロットルセンサとスロットル開度を点検すると、アクセルペダルをゆっくり踏み込んでいくと、スロットルセンサ出力及びスロットル開度が急激に変化を始めた。《写真》
スロットルセンサの不良である。
アクセル開度が一定なのに、スロットル開度が変化することで、シフト位置が変化していたようである。
スロットルセンサの開度を全閉から全開方向に変化させながら、センサのアース〜出力間の抵抗を点検してみた。(単体点検)
本来は、アクセル開度に比例して抵抗値が変化しなければならないが、この車のスロットルセンサは途中までは変化していたが、ある箇所で接触不良状態が発生した。
このセンサは接触式の可変抵抗タイプなので、一番多く使う開度の箇所が、削れて接触不良を起こしていたようである。
新品のスロットルセンサに交換すると不具合は無くなった。
AT本体の機械的不良で、シフト位置が頻繁に切り替わることは考えにくいので、今回のような場合は、まずはデータモニタで車速とスロットル(アクセル)開度を点検すべきである。
《技術相談窓口》
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