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2024年6月
イグニッションコイルの不良

走行中やアイドリング中に突然エンストするという平成21年式ヴォクシー(車両型式DBA-ZRR70W、エンジン型式3ZR)のトラブル事例を紹介する。

エンスト時には自己診断を記憶しており、そのコードはP0351、P0352、P0353、P0354という1番から4番のイグナイタ系統異常のコードである。

いつも症状が出るわけではないが冷機時の状態から暖機する時に比較的症状を再現できることが多い。

依頼をされた工場では、約2年前に全てのイグニッションコイルを社外の新品に交換しており、今回はスロットルボディーの清掃を行ったそうである。

トヨタ車のイグニッションコイルには点火確認用の回路が内蔵されており、エンジンコントロールコンピュータからの点火指示信号により適切なタイミングで点火した後に、点火確認信号としてエンジンコントロールコンピュータにフィードバックしている。

1番から4番までの全てのイグニッションコイルが同時に壊れてしまう可能性はゼロではないが非常に考えにくい。

イグナイタ系統で考えられる箇所はイグニッションコイル以外では「電源、アース、点火確認信号線、ECU」の4つである。

まず、電源はイグニッションコイルの上流にインジェクタと共通のINJリレーがあるので、アイドリング中に取り外して電源を遮断してみると、エンストはしたが1番から4番のイグナイタ系統の異常コードを表示することはなかった。

次にオシロスコープで点火指示信号と点火確認信号をエンスト発生時の瞬間をモニタリングすると、1番の点火信号後の点火確認信号がエンジンコントロールユニットに入力されていないことがわかった。《写真1》

1番のイグニッションコイルを4番と入れ替えてみると症状は移行し、4番の点火指示信号後の点火確認信号が入力されない時にエンストが発生した。

このことから1番のイグニッションコイルが不良で点火確認信号線とアース線が内部で短絡をおこしてエンストしていることがわかった。

確認のために点火確認信号線を、わざとアースさせるとエンストを起こし、1番から4番のイグナイタ系統異常のコードを表示した。

ただ、1つのコイル不良により全部のコイルの異常コードを出すことが疑問であった。

調べてみると、点火確認信号線は一般的には1番から4番まで4本の線を別々にエンジンコントロールコンピュータに入力するタイプが多いのだが、この車は1番から4番まで4本の点火確認信号線を1本にまとめてからエンジンコントロールコンピュータに入力するタイプであることがわかった。《図1》

このように整備要領書、配線図を見てどのタイプかを見分けることが大切である。

以上の内容から1番のイグニッションコイルを新品に交換することで症状は改善された。

依頼者にこのことを伝えると、新品に交換して2年位しかたっていないので、また壊れているとは思わなかったとのこと。

確かに社外のイグニッションコイルは純正品よりも低価格で購入でき、ユーザーさんにとっては喜ばしいことだが、やはり耐久性は純正品より劣るということは致し方ないことである。

もちろん純正品だからといって2年で壊れない保証はないので、交換してそんなに年数が経っていないからといって、その部品が原因ではないだろうという先入観は持たない方がよいというのは言うまでもないことである。

《技術相談窓口》


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