空燃比リーン異常と3番シリンダが失火するというH26年式デミオ(車両型式DBA-DJ3FS、エンジン型式P3)について紹介する。
依頼をしてきた工場には車検で入庫しており、エンジン警告灯が点灯していたという。
ユーザーの話では体感するような不調はなかったとのこと。
スキャンツールで確認すると「空燃比リーン異常と3番シリンダが失火」してることがわかったので、IGNコイルとプラグを新品に全数交換したが症状が改善されなかった為に当会へ入庫することとなった。
「空燃比リーン異常」だがマツダは車種や年式により異なるが独自のサービス・コードP2187(アイドル時、空燃比異常)とP2177(走行時、空燃比リーン異常)、更にP2095(A/Fリーン異常)と、他メーカと共通で使用されるP0171(空燃比リーン異常)がある。
同じリーン異常でも条件によって違うコードを表示するようになっているので点検する時は確認が大事である。
今回はP0171(空燃比リーン異常)を表示していた。
検出条件は「燃料フィードバック補正量(SHRTFT1)と燃料学習補正量(LONGFT1)の総和が所定値+30%以上、かつ燃料学習補正量(LONGFT1)が所定値+15%以上の状態で、10秒以上経過した場合」とある。
当会に入庫した時にはエンジン警告灯は消灯していたが、燃料学習補正量(LONGFT1)の数値が+20.3%でずっと動かないこと、燃料フィードバック補正量(SHRTFT1)の数値は+10%付近で変化していること、3番シリンダだけ失火カウンタの数値が増えていくことが確認できた。
この内容から今は警告灯は点灯していないが、空燃比が薄いことは間違いないと言える。
エア吸いがないかの確認の為にパーツクリーナを吸気系のダクトや接続部分に吹いてみたが変化はない。
次に燃圧の点検をスキャンツールのデータモニタにて行ったがほぼ基準値と同じで異常はなかった。(直噴エンジンなので、高圧側の燃圧をスキャンツールで確認できる)
次にエアフロ・センサを点検するとエンジン・スイッチON時の吸入空気量の基準値0.59g/s、アイドル時の吸入空気量の基準値2.17g/s、エンジン回転数2,000rpm時の吸入空気量の基準値4.73g/sに対して測定値はエンジン・スイッチON時は0.23g/s、アイドル時は1.91g/s、エンジン回転数2,000rpm時は吸入空気量4.22g/s、といずれも基準値よりも数値が少ない事がわかった。
インジェクタを外して汚れを点検すると、正常時は(図1参照)6箇所の噴射口が見えているはずだが、3番シリンダは特に汚れていて噴射口が見えなくなっていた。
インテークポート、インテークバルブ、燃焼室もかなり汚れていたので(図2はインテークポート)エンジンコンディショナで全シリンダの洗浄とインジェクタの洗浄を行った。
洗浄後に試乗をすると3番シリンダの失火は改善していたが燃料学習補正量(LONGFT1)は改善されず(20.3%)動かないままだった。
依頼してきた工場に燃料学習補正量(LONGFT1)と燃料フィードバック補正量(SHRTFT1)の数値の総和が+30%以下なので今はエンジン警告は点灯していない事と、原因としてはエアフロ・センサの特性不良のより空燃比が薄くなっている可能性があることを伝え車両を返却した。
《技術相談窓口》
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