エンジンの吹けが悪く、アクセルペダルを踏んでいないとアイドリングを保てずにエンストするという、平成25年式ノート(車両型式DBA-E12、エンジン型式HR12DDR、走行距離8万q)のトラブル事例を紹介する。
この型式のノートのエンジンにはスーパーチャージャ付きと無しがある。
車検証のエンジン型式はスーパーチャージャの有無に関係なくHR12と表示されているため、故障診断をする前にモデルナンバープレート(エンジンルームの右ストラットハウジングの前側にある)を確認してほしい。
HR12DDRと記載があればスーパーチャージャ付き、HR12DEはNA(自然吸気)エンジンであり、ともに1,200ccの3気筒エンジンである。
今回の車はHR12DDRなのでスーパーチャージャ付きである。
現象を確認すると、ユーザーの指摘通りアクセルペダルを踏んでないとエンストする。また、エンストしないようにペダル操作して発進しようとしてもガクガクしてまともに走らない。
空吹かしをしようとしても吹けが悪い。
感じとしては1気筒失火しているような感じだが、3気筒の内1気筒だけ失火をしてもエンストはしない。
ということは全てのシリンダに影響を及ぼす燃料系、空燃比系の不具合の可能性がある。
エンジンチェックランプは点灯しておらず、スキャンツールで自己診断をしてみても異常は残っていない。
エンジンが止まらないようにアクセルを軽く踏みながらデータモニタを見たが、エンジン回転は安定せず、A/Fセンサ(空燃比センサ)の数字は理論空燃比付近の時は約2.2Vで安定するはずだが、約2.4〜3.0Vの間を激しく動いて安定しない。
これは空燃比が薄い側で安定していない状態であるといえる。
まずはエア吸いを疑いエンジンルームを見てみると、エンジン不調とともに、エア吸いのようなシューシューという音が確認できた。
音の発生している箇所を探すと、エンジンの前側(クランクプーリー側)に付いている、スーパーチャージャからインタークーラーにつながっているエアダクトが割れているのが確認出来た。《図1》
この場所はエアフロセンサよりも後にあるため、シリンダにはエアフロセンサが検知しているよりも多くの空気が入っていることになる。(略図でいうと図2の箇所)
しかもエンジンの振動により割れている箇所も揺れる為、エア吸いする空気量も安定しないので、空燃比が薄い側で大きく振れていたと思われる。
完全にダクトが割れていて応急処置も出来なかったので、依頼があった工場にこのダクトを交換するように伝えて返車した。
参考までにこのエンジンのエアクリーナからスロットルチャンバまでの吸入経路の説明を記載しておく。《図1参照》
アイドリング時や軽負荷時はスーパーチャージャのマグネットクラッチをOFFにして、スーパーチャージャバイパスバルブを開くので、エアクリーナからの空気は〓のエアインレットからスーパーチャージャバイパスバルブを通り、スロットルチャンバに流れる。
加速時などの大きめの主力が必要な時は、スーパーチャージャのマグネットクラッチをONにしてスーパーチャージャバイパスバルブを閉じる。
するとエアクリーナからの空気はスーパーチャージャで圧縮され、インタークーラーで冷やされた後、スロットルチャンバに導かれる。
運転状況によりECMがこのようなコントロールをして必要な時だけスーパーチャージャによる過給を行うようにしている。
《技術相談窓口》
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