エンジン不調で走行できない平成16年式ミニキャブ(車両型式U61T、エンジン型式3G83)のトラブル事例を紹介する。
【なお今回は当会へ技術相談の問い合わせがあり電話にて対応を行った事例となる】
まずは基本点検を行うためにボンネットを開きエンジンルームを覗くと1番と3番シリンダのイグニッションコイルが膨らんでいたとのこと。
そこで1番と3番シリンダのイグニッションコイルを中古品に交換してプラグも全シリンダ新品に交換をしたところ、症状は改善されエンジンの調子も良くなったので車を納車したとのこと。
しかし、翌日に症状が再発したということで、再びエンジンルームを覗くとやはりイグニッションコイルが膨らんでいたいう。
今回は1番と2番シリンダのイグニッションコイルが膨らんでいた。中古品とはいえ、たった1日で膨らんでしまうというのはイグニッションコイル以外に原因があると思われる。
イグニッションコイルは一次コイル、二次コイルとイグナイタが一体となっており、エンジンECUの点火指示により適切なタイミングで作動している。
膨らむということはイグニッションコイルがかなり発熱しているのだろう。発熱の原因とすればコイルに過大な、または長時間の電流が流れている可能性がある。
正常なイグニッションコイルであれば一次コイルの通電時間は4msec(1000分の4秒)である。例えばECUが不良でイグニッションコイルに対してONの信号を出し続ければずっと一次コイルに電流が流れ続けるのでイグニッションコイルが発熱して膨らむ可能性はある。
ただし、この時は点火できないのでそのシリンダは失火する。
当会に過去にも同じような症状の記録があったので以下の点検をしてもらうように伝えた。
記録の内容は「エンジン本体側タイミングベルトカバー〜ボデー側間にグランドケーブルがあり、タイミングベルトカバー部のボルトが緩んでいた」「アース不良となり、エンジンECUからの点火指示の電圧値が持ち上がってしまい、1次電流が流れっぱなしになり、イグニッションコイルがパンクしたと思われる」とある。
点検してもらうとタイミングベルトカバー部のボルトが錆びており、アース不良の状態だった。
錆を落としてボルトを締め付け、イグニッションコイルを交換すると症状は改善して再発することもなくなった。
今回、エンジンECUからの点火指示の電圧値は確認することができなかったが当会の記録と同じ内容でイグニッションコイルが膨んでいたと思われる。
グランドケーブルはエンジン本体側のタイミングベルトカバー〜ボデー側と、トランスミッション部と2系統あるようだ。
この他にもグランドケーブルが途中で断線してイグニッションコイルが膨らんだという案件があった。
平成10年頃のミニキャブでイグニッションコイルが膨らむという症状の場合はグランドケーブルのボルトの緩みがないか、錆はないか、断線していないかを点検をした方がよいと思われる。
また、点検や車検を行う場合は同様の点検を行うことで今回のような不具合を防ぐことができると思われる。
《技術相談窓口》
|