スタータモータを交換した後からハンチングしだしたという、平成20年式エリシオン(車両型式DBA-RR1、エンジン型式K24A、走行距離11万km)のトラブル事例を紹介する。
スタータモータが回らなくなったというユーザーからの依頼でスタータモータを交換したとのこと。
スタータモータを交換する前はユーザーもこのような現象は無かったとのこと。
ハンチングが出だす前は暖機後のアイドル回転が3,000rpmぐらいあったそうで、スロットルセンサを少し調整してからハンチングしだしたとのこと。
その後はスロットルセンサを元の位置に戻してもハンチングが止まらなくなって当会に電話で相談があった。
スタータモータを交換する時にインテークマニホールドやスロットルチャンバを外したとのことだったので、外した部品のガスケットやホース類からのエア吸いなどが無いかを確認してもらったが問題は無いとのこと。
ただ、スロットルチャンバを外した時にスロットルバルブの汚れは清掃したとのことだった。
その後、スキャンツールでアイドリングの学習をしたが変化は無し。
このエンジンはアイドリングコントロールにロータリー式ISCV(アイドルスピードコントロールバルブ)を採用しているので、スロットルチャンバの清掃が基本のアイドリング回転にどれほど影響があるかは分からない。
ただ、スキャンツールによる学習ができないことからすると、スロットルチャンバの清掃が影響しているとは考えにくい。
そうなるとやはりスタータモータを交換する前はハンチングをしていなかったことから今回脱着をしている箇所、部品の不具合が考えられるのでスロットルチャンバを交換してもらった。(中古品)
しかし現象が変わらないということなので当会に入庫。
現象を確認するとエンジンをかけて10秒ぐらいはエンジン回転が約2,500rpm一定で、その後1,000〜2,500rpmの間でハンチングをする。
スキャンツールをつないでハンチングしている時のデータモニタを見てみると、エンジン回転が上がった時にフューエルカットをしてエンジン回転が下がり、またインジェクターが噴射を始めると回転が上がる、と動きを繰り返していた。
ということは、何らかの原因でシリンダに入る空気量が増えているために回転が上がり、フューエルカットにより回転が下がる、という動きを繰り返している、ということである。
吸入空気が増える要因としては、エア吸いの可能性もあるので、その有無の確認のためにスロットルチャンバの入口を丸い金属の蓋で徐々に閉じていったところ、どんどんエンジン回転は下がり、完全に閉じた時にすぐにエンストした。
ということはスロットルチャンバより下流にエア吸いは無いと思われる。
次に、スロットルチャンバよりも下流に入るエアホース類をプライヤーで挟んでいったが変化は無い。
こうなると怪しいのはスロットルチャンバについているISCVだ。
中古品とはいえ交換しても変化が無いので半信半疑だが、スロットルチャンバを取り外してISCVを外してみた。
するとISCVが少し開いた位置で固着していることが分かった。
ISCVを清掃して組付けるとハンチングはおさまり、アイドリングは正常になった。
依頼があった工場に最初に付いていたスロットルチャンバを持って来てもらい、ISCVを外してみると、こちらも同じような位置で固着していた。
今回はスタータモータを交換した後にハンチングが発生したということからヒューマンエラーによる原因を第一に考えてしまったが、偶然にもこのタイミングでISCVが固着、さらに中古品も同じように固着していたという結果だった。
中古品を使用する時は、汚れによる作動不良が起きそうな部品は予め清掃をしてから使用した方が二度手間にならなくて良いかもしれない。
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