アイドル回転数が低く、特に冷機時はアクセルペダルを離すとエンストするという平成18年式ミニキャブ(車両型式U61V、エンジン型式3G83、走行距離29万Km)について紹介する。
中古部品でスロットルボデー、ISC、エンジンECUを交換したが改善しないと工場から依頼があり当会に入庫した。
症状を確認するとアクセルペダルを踏んでいないとアイドル回転が低くエンストしそうだが少し踏み込んでいればエンストもせず、エンジンの回転数を維持することができた。
エンジン不調の確認をするため正規のアイドル回転数になるようにアクセルペダルを踏み込んでみたところ、エンジンの調子には全く問題がなく、エンジン回転数を維持することが確認できた。
このことから点火系、燃料系、エンジン本体の不具合ではなく、アイドル回転制御の不具合であると判断した。
アイドル時のデータモニタを確認するとISCポジションは85〜90Stepと正常値(2〜25Step)よりも大きかった。
このことからエンジンECUはISCに通路を広げるように指示しているのに実際には回転が上がらないことがわかった。
次にISCのカプラを外し、ステップモータのコイルの抵抗(1−2、3−2、4−5、6−5各端子間の抵抗)を測定すると、それぞれ約30Ωと正常値だった。
ISCの12V電源(2、5端子)、ISC〜エンジンECU間の各配線、エンジンECU側でオシロ信号波形を測定しても正常だった。
エンジンECUからの指示が出ており、ISCのステップモータのコイルの抵抗も正常値なのにアイドル回転数が低いということはISCが作動してないか、汚れ等でISCの通路が詰まっている事が考えられる。
スロットルボデーを取り外すとガスケットでISCの通路の出口を塞いでしまっている事がわかった。
原因はガスケットの組付け方向の間違いによるものだった。
スロットルボデー交換時にガスケットも一緒に交換したが、入庫時のガスケットと形状が違ったという。
車両型式が同じでも形状が異なるガスケットが存在するようだ。
これではいくらエンジンECUが指示を出しISCが通路を広げてもエンジンの回転数を上げることはできない。
塞いでいるガスケットを取り外し、汚れ等でISCの通路が詰まっていないかエアーガンを使用し確認するとエアーの通りが悪く詰まっていた。
清掃をするとエアーが通るようになった。
ガスケットの組付け方向を正しく組付けエンジンを始動すると、始めのアイドル回転数は基準値よりも高かったがアイドル学習が行われ徐々に正規のエンジン回転数まで下がっていった。
データモニタでISCポジションを確認すると正常値となり正規のアイドル回転数になった。
エアコンSWを押し、電気負荷を与えるとエンジン回転数が上がった事からISCの作動は良好と判断した。
入庫した時はISCの汚れによるアイドル不調、中古のスロットルボデーに交換した時はガスケットの取り付け方向の間違いによるアイドル不調という2つの原因によりアイドル回転数を維持することができず、エンストをしていた。
本来であれば取り外したとおりに部品を取り付ければよいのだが、今回のように中古部品を使用した時は年式等により、もとの形状と違い、表裏どちらでも取り付けられる部品の場合もある。
取り付ける前に仮に部品を組んでみて、問題がないか確認する必要がある。
依頼があった工場に説明をして返車した。
《技術相談窓口》
▼中古のスロットルチャンバに交換したときのアイドル不調の原因
▼入庫時のアイドル不調の原因
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