エンジン不調はないのに失火を検出してエンジンの警告灯が点くという、平成28年式アテンザワゴン(車両型式DBA-GJEFW、エンジン型式PE、走行距離65,500q)のトラブル事例を紹介する。
車検整備が終わり検査場に行こうとした時にエンジンの警告灯が点いて自己診断に「P0304:4番シリンダミスファイヤ」が出ているとのこと。
車検入庫時にユーザーから警告灯の話は無かったらしい。(ユーザーが気付いてない、言い忘れていたという可能性もある)
アイドル時、走行中ともにエンジン不調は無いが、一旦自己診断を消去して走行するとすぐにまた「P0304」を検出するとのこと。
イグニッションコイルを他のシリンダと入れ替えたり、スパークプラグを新品に交換しても症状が改善しないので見てほしいとのことで当会に入庫。
現象を確認すると、たしかにアイドリング中、走行中ともに体感するエンジン不調はないが、自己診断は「P0304」を検出していて、データモニタの失火カウンタを見てみると4番シリンダだけが時々失火を検出して失火回数が増えていく。
マフラーの出口付近で排気音を聞いてみると「ボボボボボ」という連続した排気音の途中で時々「ボッ」という感じで、たしかに時々失火していることが確認できた。
念のために当会でもイグニッションコイルを他のシリンダと入れ替えてみたが、やはり4番シリンダが失火を検出する。
スパークプラグを外して全気筒とも圧縮圧力を計測したが全て基準値内でばらつきもなく正常だった。
他に考えられる可能性はインジェクタの不良や燃焼室内の汚れ等がある。
エンジンコンディショナをプラグホールから吹き込んで燃焼室を掃除したが変化は無し。
次にインジェクタの点検だが、このエンジンは直噴エンジンのためインジェクタの取り外しに少し手間がかかるがインテークマニホールドを外してインジェクタを点検することにした。
インテークマニホールドを取り外してインテークポートを確認すると、写真の「4番のインテークポート」のようにインテークバルブがただ汚れているだけでなく湿っていた。
このエンジンは直噴エンジンなのでガソリンはシリンダ内に直接噴射されるのでインテークポートを通過しない。
そのため正常であれば、写真「他のインテークポート」のように汚れはあっても乾いているはずである。
そしてインジェクタを外すと、写真「インジェクタの比較」のような状態であった。
右側の汚れが多いのが4番のインジェクタである。
この汚れによって適切なインジェクタの噴射量が出ていない可能性がある。
インテークポート、インジェクタの汚れの原因だが、外したインテークマニホールドを傾けるとエンジンオイルが出てきた。
ブローバイガスとしてインテークマニホールドをエンジンオイルが通過するが、内部に溜まるのは異常である。
エンジンオイル量が多すぎたり、PCVバルブの開固着などでブローバイガスが異常に多くなったりするとこのような症状が起きるかもしれないが、PCVを点検したところ正常、エンジンオイルは車検整備で交換していたため交換前の状態は不明。
依頼があった工場に内容を説明してインジェクタを持って来てもらった。
4番のインジェクタを交換したところ失火は無くなり正常となった。
結論としては不具合部品は4番のインジェクタであるが、インジェクタも「被害者」であり「加害者」はインテークマニホールドに溜まったエンジンオイルと考えられる。
依頼があった工場にはエンジンオイルのメンテナンス、オイル量を適切にするようにユーザーに伝えるようにお願いした。
ちなみにこの車は2年前に中古で購入しているようで、前ユーザーのメンテナンス不良の可能性も考えられる。
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