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エンジン警告灯が点灯し、アイドル不調と加速不良が起きているという平成15年式プレオLE-RV1、走行距離132,000kmの事例を紹介する。
工場に入庫した時は、上記の症状とタペットカバー付近でカチカチという音がしていたそうで、プラグコードのリーク音と思い、プラグコードを交換したが、症状も音も変化がないため当会に相談があり、入庫することになった。当会で症状を確認すると、アイドリングが安定せず、加速しようとしても力が無い。
エンジン警告灯も点灯していたため、スキャンツールで自己診断を確認すると『P1512:ISC 信号線2系回路異常』が表示された。
カチカチという音はアイドリング回転が上がった時に鳴っているようである。排気ガスを測ると、CO、HC ともにほぼゼロだった。
エンジン警告灯が点灯する原因となっている自己診断コードはアイドリング不調に関するもので、加速不良の原因は別にあると思われる。
基本点検として燃圧を確認すると0.3MPa で正常値、スパークプラグを外すと1番と3番のスパークプラグが、やや白く焼けていた。
圧縮圧力を測定したところ、4気筒とも約1.1MPa で正常(基準値は1.0MPa以上)。
マフラーで排気音を聞いてみる、『ボボボッ…ボボボ』という感じで時々失火したような感じがある。まず自己診断コードP1512の診断から始め、整備マニュアルの通りISC の単体点検をしたところ、ISC の4本のコイルの内1本だけ基準値の29Ωに対して 2Ωと大きく基準値を外れていた。
その他のコイルは約29Ωで正常。
この結果ISC 作動不良によるアイドル不調とエンジン警告灯が発生していたと推測できる。
アイドリング時のカチカチ音だが、よく聞いてみるとタペットカバーの上についているキャニスターパージコントロールバルブから聞こえる。
このキャニスターパージコントロールバルブのコネクタを抜くと、アイドリングが上下してもカチカチ音がしなくなった。
カチカチ音の原因はISC 不良によるアイドリングの上下で、あるエンジン回転数以上になったときにキャニスターパージコントロールバルブが動いていたようである。
なのでISC を交換してアイドリングの上下が治まればカチカチ音も止まると思われる。
次に加速不良だが、イグニッションコイルとスパークプラグは新品に交換しているとのことだったので、燃料系が疑わしい。インジェクタの作動音を聞くと、マフラーからの排気音を聞いた時と同じようなリズムで、1番と3番のインジェクタの作動音が不整脈のように間が抜けることが確認できた。
2番と4番のインジェクタは等間隔で正常に音が出ている。
突然ISC とインジェクタ2本が同時に作動不良を起こすとは思えないので、ユーザーが気にせずに乗っていて、インジェクタが1本悪くなり、ISC が悪くなり、またインジェクタが1本悪くなって…という感じで、いよいよ走行に支障が出るようになったのではないかと思われる。
ISC とインジェクタ2本の交換が必要であることを依頼があった工場に連絡しようと思ったが、念のためにエンジンECU のインジェクタ波形をオシロスコープで測定してみた。
すると、写真《異常波形》のように1番と3番のインジェクタの作動音がしない時はインジェクタの波形が抜けていることがわかった。
写真《正常波形》は2番と4番シリンダで、等間隔で波形が出ている。
頭の中で『インジェクタ回路が2系統悪くなることはないだろう』と勝手に思い込んでいたが、オシロスコープで測定して良かった、と安心した。
依頼があった工場にISC とエンジンECM の交換が必要であることを伝えて返車した。
後日連絡があり、ISCとエンジンECUを交換したところ、アイドル不調、カチカチ音、加速不良の全てが改善されたとことだった。
思い込みはダメ!ゼッタイ!
《技術相談窓口》
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