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2005年8月
再現性の低いトラブルを調べるには…
 エアコンの冷えが悪くなる事があり、その時はマグネット・クラッチがひんぱんに切れたり、入ったりをくり返しているという、平成13年式のワゴンR(LA-MC22S、エンジン型式K6A、走行3万2千km)のトラブル事例を紹介する。
 不具合はなかなか再現せず、その時の状況を確認したメカニックの話では、マグネット・クラッチと電動ファンが同時にON-OFFするらしい。
 この車は、「エンジン」「A/T」「エアコン」の制御を1つのECUがおこなっており、汎用の外部診断器(HDM2000)を接続すれば、その状況を調べる事ができる。
 図1に示すように、「A/Cスイッチ」「ラジエータファン」「A/Cコンプレッサクラッチ」のON・OFFの様子が確認できるようにして、不具合の再現に備えた。
 現時点では正常に作動している事を確認した上で、各部の点検をおこなってみた。
 診断器のデータモニタ画面を見張ってもらいながら、ワイヤハーネスをゆすっていくと、突然『カチャ・カチャ』とマグネットクラッチがON-OFFをくり返すようになった。
 ゆすったのは、エンジンルーム・ハーネスとインスト・ハーネスを接続している、グローブボックス奥のコネクタ部分である。
 その時の診断器の画面は、図1−(2)に示すように、A/CスイッチだけがONで、ラジエータファンとA/Cコンプレッサクラッチは、ON−OFFをくり返していた。
 この事から、デュアルカットスイッチ、A/Cスイッチ、ブロアスイッチを経由してグランドする回路には異常がない事が確認できた。〔図2−(1)の回路図参照〕
 そうなると、他の条件のいずれかが成立していないために、マグネット・クラッチとラジエータファンが停止してしまうものと考えられる。
 マグネット・クラッチ等への通電条件は、エバポレータ温度やエンジン負荷(スロットル開度及び水温)などによって決まるので、それらの信号を点検する必要がある。
 この中で、前述の診断器で確認ができないのは、エバポレータ温度なので、ここだけは電圧計を使ってサーミスターの電圧変化と、吹き出し口の温度を測定しなければならない。
 正常な場合は、図2−(1)に示すような特性でマグネット・クラッチが制御されていた。
 電圧計に目をやりながら、さきほどのコネクタを触ってみると、正常時よりも電圧値が下がるとともに、マグネット・クラッチがOFFしてしまった。

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