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2006年3月
リヤブレーキの作業時は注意を!
 今回はトラブル事例ではなく、整備時に注意しないといけない事例を紹介する。
 車は平成15年式デミオ(車両型式DY5W)車検に入庫してきた車両である。
 リヤブレーキの点検をするために、センタロックナットを緩め、リヤブレーキドラムを外したのだが、センタロックナットが通常のナットと違うことに気が付き、毎月各工場に配布している技術情報で調べたという。
 すると、この車のリヤブレーキは、センタロックナットを緩めずに、バックプレート裏からスピンドルとドラムを一体で外さなければいけないと書かれていたらしい。それで、どうすればいいのかということで電話相談があった。
 センタロックナットを緩めずにブレーキドラムを外す? スピンドルとドラムを一体で外す? そんなことできるの? と思いながら、過去の技術情報を調べてみると、2002年10月号に「デミオの紹介と点検整備方式」が載っていた。
 その中に、「リヤブレーキドラム整備作業上の留意点」ということで、要約すると「リヤブレーキの清掃、シュー等の部品交換作業時に、ベアリングヘのゴミ混入防止、プリロード調整作業の省略を目的として、ブレーキドラムを取り外す際は、センタロックナットを緩めず、バックプレート裏からスピンドルを固定しているボルト(4本)を外し、ドラムとスピンドルを一体で取り外して下さい。」という記載がされていた。(図1参照)
 また、「構成部品の取外し、取付けには専用工具が必要なものがあります。」との注釈があった。
 相談者は、専用工具が必要なのか? センタロックナットの締め付けトルクはいくらなのか? 組付け方法はどうすればいいのか? という相談だったので調べてみると、ABSセンサ・ロータやホイール・ベアリングを脱着する場合は、専用工具は必要だが、ドラムだけであれば必要なさそうだった。
 また、組付け方法もそんなに難しくはなかったが、手順通りにしないと異音の原因になるようだった。
 手順は、ドラムを左に回転させながら35〜40N・mでセンタロックナットを締め付けた後に、ドラムを左に10回転以上回して、更にドラムを左に回転させながら225〜245N・mで締め付けるというものである。(図2参照)
 確かに、ゴミの混入防止、プリロード調整作業の省略を考えれば、この方法のほうが良いのだろうが、今までセンタロックナットを外してドラムを外すというやり方をしていたメカニックにとって、まさかスピンドルと一体でドラムを外すなんて思いもしないので、ドラムだけを外してしまったことは無理もないことである。
 ただ、外したナットが通常の物と違うことに気がついて、技術情報で調べたことは素晴らしいことである。
 何も気付かず、そのまま組み付けていたら、何らかの不具合が出ていたかもしれなかった。
 この車は、平成14年8月に発売されており、昨年8月以降には車検を迎えているので各工場では注意が必要である。
 また、この車に限らず、他の車種でも同様の外し方をする車があるかもしれないので、通常と違うと感じたのであれば、技術情報等を活用して調べてもらいたい。
 こんな特殊な構造にしているのであれば、メーカーも作業間違いを防ぐために、センタロックナットを通常の工具では外せないようにしてほしいものである。
《技術相談窓口》
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